2008年、世界的にコンパクトSUV人気が高まる中、フォルクスワーゲンから初代ティグアンが登場した。日本でも手頃なサイズで、実生活に密着しそうなこのモデルには大きな注目が集まった。Motor Magazine誌では「特集フォルクスワーゲンとアウディ」の中で、ほぼ同時期のデビューとなったアウディQ5と比較しながら、日本上陸を果たした初代ティグアンの魅力に迫っている。ここではその興味深いレポートを振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年11月号より)

170ps仕様の2.0TSIながら予想を大きく上回る動力性能

そのティグアンに乗ってみる。エクステリアは期待通り、フォルクスワーゲンらしく奇をてらわず、必要以上に押し出しを強めずといったケレン味のない仕上がり。奥行きのある独特のヘッドライトはイオスやトゥアレグなどとの共通性を思わせる一方で、横長のテールライトは新しいゴルフ6も彷彿とさせる。この時期に登場するフォルクスワーゲンのニューモデルとしては自然なデザインと言えよう。

ボディサイズは全長4460mm×全幅1810mm×全高1690mm。コンパクトと言うにはややためらいも感じるが、実は先達のRAV4やCR-Vよりも幅方向では小さい。もはや日本でも手頃と言うべきサイズ感で、実際に狭い市街地を走り抜けても、車幅感覚のつかみやすい良好な視界と相まって苦労はまったく感じられなかった。

ところで、今回試乗に連れ出したティグアンは、トラック&フィールドというグレード。これはオフロード走行などSUV本来のアクティブな使い方を想定したモデルで、そのためフロントバンパー下を斜めにザックリと削り上げて28度ものアプローチアングルを持つ。ちなみに搭載されるのは170psの新世代の2.0TSIエンジンだ。

ティグアンは将来的に2つのモデル展開になる予定で、2009年半ばにスポーツ&スタイルが追加登場する。これは厚みのあるバンパースポイラーを備え、エンジンも200ps仕様、装備類もより充実したオンロード寄りの上級モデルという設定になる。

そんな予備知識もあって、トラック&フィールドは大人しめの味付けなのかと思っていたらとんでもなかった。ゴルフのベースモデルであるTSIトレンドラインがとてもそうは思えないほど快活な走りを見せるのと同様、170psのティグアンもまた、予想を大きく上回る動力性能を味わわせたのだ。

その理由は2.0TSIのトルク特性にある。パサートに搭載される200ps仕様のCAW型エンジンに対し最高出力こそ抑えてはいるものの、最大トルクは280Nmで変わらず。そのゆとりのトルクを1700〜4200rpmの間でフラットに出すというのがこのエンジンのキャラクター。低速域のトルクはまさに十分で、トルクコンバーター式6速ATと組み合わされることもあって出足は非常に軽快だ。

また、中速域のゆとりあるトルク感も過給エンジンならではで、特に3000〜5000rpmあたりでは胸のすくような加速が楽しめる。さらに、6速ATはステップ比も適切で、この心地よい加速が長く続く。

今回は参考比較車として同じ170psを1.4TSIツインチャージャーから引き出すゴルフトゥーランのTSIハイラインも試したのだが、やはりベースとなる排気量が違うため、差は歴然としていた。ベースの排気量を2LとしているCAW型エンジンは、2.5Lから3Lエンジン並みの実力を備えているのである。

200ps仕様が登場する前にこんなことを断じてしまうのはどうかとも思うのだが、おそらくトラック&フィールドとスポーツ&スタイルの性能差はさほど大きいものにはならないと思う。170ps仕様の出力特性は燃費面で不利となる高回転域の出力をマネジメントで抑えているに過ぎないからだ。もちろん仔細に乗り較べれば伸びに若干の差はあるだろうが、現状の170psでも十分に満足のいく動力性能をティグアンは有している。

ところで、このティグアンに少し遅れて、僚友のアウディもQ5というコンパクトSUVを登場させている。トゥアレグがカイエンやQ7とプラットフォームをシェアしていたのは周知の事実で、だったらコンパクトクラスもと考えたくなるが、ティグアンとQ5はまったく別のクルマだ。

ティグアンはフロントセクションからアッパーボディまでをパサート、リアセクションはゴルフをベースに開発されたと解説されている。つまりは横置きエンジンだ。一方のQ5は縦置きエンジンで、これはアウディオリジナル。A4/A5に採用の最新プラットフォームを使っている。

アウディがDセグメント以上を縦置きとするのは、大排気量エンジンを横置きにした際にどうしても出てきてしまうパワーユニットの揺動と、それに伴うステアフィールの悪化を嫌ったためと考えられる。つまりプレミアムブランドとして走りの質にこだわった結果だ。ティグアンのように2.0TSIを上限とする場合、あまり大きな問題とはならないが、A4やQ5はV6エンジンを搭載するので切実である。

ちなみにパサートは、V6エンジンを横置きするため、やはりこの問題を完全には克服できていない。そこで後輪にも駆動力を分散させる4MOTIONとの組み合わせが主流なのだ。

ところでその4WDシステムだが、これもティグアンとQ5では方式が異なる。ティグアンの4MOTIONは前後の回転差に依存しない、電動式の専用油圧ポンプを備えた新世代のハルデックスカップリング。反応速度の速さと後輪のトルク制御を自在にできるのが自慢だが、基本的には前輪が主に駆動を受け持ち、必要に応じて後輪にトルクを回すオンデマンド式だ。

画像: フロントバンパー下部を深く切り込みアプローチアングルを28度確保。ディパーチャーアングルは25度。最大43度の斜面を駆け上がる登坂性能と本格的オフロード性能を持つ。

フロントバンパー下部を深く切り込みアプローチアングルを28度確保。ディパーチャーアングルは25度。最大43度の斜面を駆け上がる登坂性能と本格的オフロード性能を持つ。

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