2008年、世界的にコンパクトSUV人気が高まる中、フォルクスワーゲンから初代ティグアンが登場した。日本でも手頃なサイズで、実生活に密着しそうなこのモデルには大きな注目が集まった。Motor Magazine誌では「特集フォルクスワーゲンとアウディ」の中で、ほぼ同時期のデビューとなったアウディQ5と比較しながら、日本上陸を果たした初代ティグアンの魅力に迫っている。ここではその興味深いレポートを振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年11月号より)

コンパクトSUVの分野でも作り込みの真面目さは健在

そんなわけで、今回オンロードを主体として走っている限りでは、4WDを意識することはまったくなかった。唯一、センターコンソールにあるオフロードボタンがその存在を主張しているだけだ。これは、押すと降坂の駆動力制御を自動的に行うヒルディセントアシストがアクティブになり、併せてトランスミッション、スロットル/デフロック/ABSの特性をオフロード走行に最適化するというものである。

一方、Q5はもちろんセンターデフを備えたクワトロシステムが採用される。興味深いのはフロントを40%、リアを60%と、駆動力の多くを後輪に振り分けていること。これは4つのタイヤのグリップ力をより効率よく使えるため、とくにオンロードのハンドリングが向上する。これもQ5ならではのこだわりと言って良いだろう。

最後にトランスミッションだが、ティグアンはティプトロニック付き6速AT、Q5は新開発の7速Sトロニックだ。トルクの増幅を行いシフトチェンジも滑らかなATはオフロードに向くアイテム。一方のSトロニックはシャープなレスポンスが身上と、この辺にも性格の違いがよく表れている。

つまり、ティグアンはフォルクスワーゲンが満を持して送り出すコンパクトSUVとしてオン/オフ両面のバランスに配慮し万能性を強調。一方のQ5はプレミアムSUVの末弟として、それもとくにオンロードにおいての質にこだわった。両車は性格が明確に異なるのだ。もっともティグアンのスポーツ&スタイルでは、やや重複する部分が大きくなる気もするのだが。

さて、ティグアンのインプレッションに戻ろう。背が高いSUVとしてはボディの動きがよく抑えられておりフットワークは非常に軽快。今回試乗したトラック&フィールドは16インチのマルチパーパスタイヤを履いており、ペースが上がるほどにそのグリップ力に不満が出るほど。もっともこれが良いヒューズになっているのも確かで、限界が近づいたときの「お知らせ」はわかりやすく安心感が高い。

その分乗り心地はやや硬めとなるが、それも路面の感触が明確に伝わる程度で荒さとはなっていない。

キャビンは使われるパーツにゴルフプラスとの共通点が多いものの、フォルクスワーゲンらしい作り込みの良さは健在。5名がゆったり過ごせる居住性を備える上に、ワンアクションでフラットにフォールドするシートなど利便性もよく考えられている。

フォルクスワーゲンのブランド力とバランスの取れた機能、そして360万円という現実的な価格を考えると、このティグアン、かなりのヒット作となりそうだ。(文:石川芳雄/写真:永元秀和)

画像: 縦に2つ並んだエアコンベゼルが特徴的なインパネ。キャビンは使われるパーツにゴルフプラスとの共通点が感じられる。

縦に2つ並んだエアコンベゼルが特徴的なインパネ。キャビンは使われるパーツにゴルフプラスとの共通点が感じられる。

フォルクスワーゲン ティグアン トラック&フィールド 主要諸元

●全長×全幅×全高:4460×1810×1690mm
●ホイールベース:2605mm
●車両重量:1640kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1984cc
●最高出力:125kW(170ps)/4300-6000rpm
●最大トルク:280Nm/1700-4200rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・63L
●10・15モード燃費:9.7km/L
●タイヤサイズ:215/65R16
●車両価格(税込):360万円(2008年当時)

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