いよいよ欧州車メーカーも小型SUV市場に本腰
やはり欧州の自動車作りは保守的なんだなあと、最近改めて思う。今回紹介するティグアンも、そうした有り様を如実に映し出している1台だ。
SUVは、この10年間大きな変化の波にさらされたカテゴリーである。1997年に日本国内でハリアーが登場し、翌年レクサスからRXとして北米デビュー。乗用車のプラットフォームをベースとしたこのクルマは、とくにアメリカにおいて、従来からあったトラックベースのSUVとはまったく異なる顧客層を開拓した。生活臭が強くなり過ぎたステーションワゴンやミニバンに代わる新たなファミリーカーというポシジョンを築き上げたのだ。
これに触発されたのが欧州のプレミアムブランドで、レクサスRX以降各社が投入したブランニューSUVはBMW X5、フォルクスワーゲン トゥアレグ、ポルシェカイエン、アウディQ7など枚挙に暇がない。
Mクラスをハリアーに先行して出していたメルセデス・ベンツは、やや軸足に迷いのあったこのクルマを2世代目で見事に再生。現在はより大きなGLクラスまでもラインアップする。さらに、BMWからはX6なるクーペクロスオーバーまでも登場。熟成期に移り、バリエーションの裾野を拡大しつつあるのが、プレミアムSUVと呼ばれるジャンルだ。
しかし日本市場に新たに登場したティグアンは、これらとはサイズ的/車格的な存在感が若干異なる。もっと手頃でヨーロッパや日本の実生活に密着しそうなコンパクトSUVだ。
実は、こうしたジャンルにも先達がいる。ここでも始祖となったのは日本車で、1994年にトヨタが登場させたRAV4と、翌年登場のホンダCR-Vだ。
小型車が得意な日本メーカーが、そのプラットフォームに軽便な4WDシステムを積み込む手法でこれらの小型SUVは作られた。そして、世に出してみるとこれが日本よりも海外で好評を博すこととなった。欧州ではハッチバックに代わるクルマとして受け入れられたし、北米では若い女性ユーザーの需要も多かったと聞く。
理由は、モノスペースキャビンのもたらす使い勝手の良さ、高いアイポイントと堅牢そうな車体から来る安心感、そして適度なサイズ感から来る使いやすさといったところ。プレミアムがウケた理由とそう大きく異なるとは思えないし、コンパクトSUVは北米のみならず欧州でも人気が高まった。にもかかわらず何故かこのコンパクトSUVに名乗りを上げる欧州メーカーは多くなかった。だから欧州市場は保守的なんだなあという、冒頭のつぶやきが出てしまうわけだ。
コンパクトSUVに対し敏な動きを見せたのはBMWが唯一。2004年にはX3を投入しており、プレミアムブランドでは一人勝ち状態を続けている。
折しもの原油高騰や、フリート燃費の低減など、SUVと言えど小型化が望まれる要素は多い。実際市場での人気が盛り上がりを見せており、メーカーも静観してはいられなくなった。で、ここにきてメルセデスGLK、アウディQ5、そしてティグアンの登場となったのだ。
大型車を得意とするプレミアム勢はともかく、小型実用車を中心とするフォルクスワーゲンは、このジャンルにもっと早く着手しても何も不思議はなかった。その意味でも「待っていたぞ」の想いは強い。