2006年に登場した6代目パサートヴァリアントと2008年に発表された4代目A4アバントは、フォルクスワーゲンとアウディの微妙な関係が見えるモデルだった。世代によって、パワートレーンを共有したり、独自路線を歩んだりと変化していた。Motor Magazine誌では特集「フォルクスワーゲンとアウディ」の中で、6代目パサートヴァリアントと4代目A4アバントの試乗をとおして、2008年当時の「フォルクスワーゲンとアウディ」の関係・志向を考察している。今回はその興味深いレポートを振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年11月号より)

別の道を歩むことになった両ブランドのDセグメント車

というわけで、ここでの題材として俎上に上げたのがフォルクスワーゲン パサートとアウディA4。そんな両車を並べると、同じDセグメントとしてカテゴライズされるモデルでありながら、なるほどそこには微妙な狙いどころの差というものを感じとることができる。

現行パサートが初公開されたのは、2005年春のジュネーブショーの舞台。それ以前のモデルに比べるとボディサイズが明確に大型化し、それも含めて弟分であるゴルフ/ジェッタシリーズとの間の、明確な差別化を意識したことが見てとれる内容で発表されている。

一方で、そもそもが実用車メーカーであったフォルクスワーゲンというブランドが、メルセデスに負けない上級モデルまでを含めた「フルラインアップメーカー」を目指すという野心を抱くようになると、パサートの狙いどころにも微妙な変化が見られるようになった。

前述のようにそもそものラインアップ内では「ゴルフ/ジェッタの上に位置するセダン/ワゴン」というのがパサートシリーズの位置づけ。ところが、そこで「高級」という2文字を意識すると、今度はアウディA4との競合を避ける必要に迫られる。

初代、そして2代目とアウディ車ベースのパワーパック縦置きレイアウトを採用したパサートだが、1988年にリリースの3代目モデルでは、FF車としてはより普遍的なパワーパック横置きレイアウトを採用。すなわち、「アウディとは異なる道を歩む」という姿勢が技術的にも鮮明になったのがこの時期と見ることもできる。

もっとも、1997年にフルモデルチェンジを行ったモデルでは、再びアウディ車の骨格と同様の縦置きパワーパックへと回帰しているから、先の説明はいささか説得力を失ってしまうことになる。あるいは、前出フェルディナント・ピエヒがフォルクスワーゲン会長へと就任した1993年というタイミングを鑑みると、当時の高級ブランド化構想に際して、氏が以前に自らの在職期間中に構築した「アウディの財産」を最大限に利用しようとした、というシナリオも想定できないではないわけなのだが。

一方のアウディが採ってきた商品戦略は、「メルセデスやBMWに追いつき、そして追い越すモデルを作り上げる」というもので、こちらは明確だ。それはモデルチェンジのたびのボディの大型化や内外装質感の大幅向上。そして、代を重ねるごとにその存在感を飛躍的に増してきたフロントマスクの造形にも象徴されていると言って良いだろう。

というわけで、そんなパサートとA4の最新モデルを、改めて横比較で乗ってみた。

画像: 2006年3月に日本に上陸したパサートヴァリアント。2.0TSIスポーツラインは、従来あった2.0Tに代わるものとして今年2008年5月に登場した新しいグレード。エンジン出力は従来の2.0Tと同等ながら10・15モード燃費は10.6km/Lと0.2km/L向上している。

2006年3月に日本に上陸したパサートヴァリアント。2.0TSIスポーツラインは、従来あった2.0Tに代わるものとして今年2008年5月に登場した新しいグレード。エンジン出力は従来の2.0Tと同等ながら10・15モード燃費は10.6km/Lと0.2km/L向上している。

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