心に響くA4アバントの洗練されたフットワーク
今回のテスト車であるパサートヴァリアント2.0TSIスポーツラインは、全長が約4.8m、全幅が1.8mオーバーという堂々たるボディに、ダッシュボード全面をウッドパネルが横断し、その要所に「光り物」が散在するというデコレーションが施されたインテリアの持ち主。すなわち、ルックス的にはA4アバント以上に一見してなかなかの立派さを放つのが、まずはひとつの特徴だ。
一方、日本に新着なったばかりのA4アバントは、駆動系レイアウトを大変更して手に入れたスラリと伸びた前足位置と、いかにもスタイリッシュなリアセクションのコンビネーションが、荷車とはほど遠いモダーンなイメージを全身のフォルムとして表現。インテリアは、ステーションワゴンとあっても質感の高さとデザインのこだわりでは定評あるアウディクオリティそのもので、例えばステアリングホイールの仕上がりひとつをとっても、パサートのそれとはやはり「身を置くクラスが異なること」を高らかにアピールする。
そんな両車で走り始めてみると、まずはA4アバントのフットワークの洗練度の高さが心に響く。実は今回乗った1.8TFSIには、本来は16インチであるところに18インチのオプションシューズを履かされ、それもあって路面凹凸に対する当たり感はそれなりに硬いものだった。
が、そこから先のサスペンションの動きのスムーズさは、パサートの比ではない。A4よりも1サイズ小柄な17インチのシューズを履くパサートだが、走り始めの瞬間から常に上下Gが強めな印象。さらに、路面にある大きな凹凸上を乗り越すと、時にボディが負け気味という印象に通じる、ボコッという強い振動感を伝えてきたりもする。エンジンの回転フィールやパーフェクトなシフトプログラムを備える6速ATの変速フィールが素晴らしくスムーズであるだけに、こうして足の粗さが少々目立つ結果となってしまったのがパサートの走りだ。
一方A4は、パサートがちょっと苦手とするそうした領域こそが、逆に大の得意という走りのテイスト。コーナリングシーンでトラクションの抜けと同時にアンダーステアの発生を実感させるパサートに対して、A4はハンドリングの自在度がずっと上で、追い込み舵もしっかり効く。もちろんそこには、今回はA4の方がエンジントルクが控えめな上に前述のようにオプションシューズを履いていたという理由も大きいはずだが、同時にやはりシャシシステムの新しさというのも明確に効いているに違いない。
ただし、動力性能という点になると、A4に採用されているCVTは必ずしも美味しさばかりを提供してくれるわけではない。効率重視であるA4のCVTは、可能な限りエンジンを低回転に保とうとするために、常にこもり音を発生させがちだし、エンジン回転数と車速がリンクしてくれないという感覚は、決してファンなものとは思えないのだ。
そうした現状を考えると、現在アウディ各車が採用しているCVTは、いずれDCT(デュアルクラッチトランスミッション)であるSトロニックに置き換えられるのではないか!?というのはあくまでも私見。しかしアウディには、すでにQ5のリリースとともに姿を現した、縦置きパワーパック用のDCTという選択肢がある。単なる実用車であればともかく、あくまでもプレミアムメーカーを目指すアウディたるもの、多少のコストアップを承知しても、よりドライバビリティに優れたものを採用することは、ある意味当然の流れであるとも言えるのではないだろうか。