リッターあたりの最高出力はフェラーリ史上最強レベル
実は、史上初のミッドシップV8フェラーリは1973年デビューの308GT4だ。もっとも308GT4は2+2の4人乗りっだった。これを2シーターにしてスポーツ性を高めたのが、1975年に誕生した308GTBだった。そこから45年以上の歳月をかけ、8度のモデルチェンジを経て誕生したのがF8トリブートである。
ここで「おや?」と思った読者もいるだろう。F8トリブートがフェラーリV8ミッドシップの最後を締め括るモデルであることはわかったが、では、次は何が出るのか? V6なのか? ミッドシップ以外のレイアウトなのか? それともハイブリッドなのか? 実は、その答えはまだ明らかにされていない。そんなミステリアスなところもまた、フェラーリらしいといえる。
F8の魅力はなんといってもそのエンジンにある。排気量3.9LのV8ツインターボは720psを発生。リッター当たりの出力は185psで、これはフェラーリ製内燃機関として史上最高スペックだという。また、フェラーリが近年好んで使うゼロターボラグも達成。ターボエンジンとは思えないレスポンスの良さも売り物のひとつだ。
前作488をベースとする車体関連ではエアロダイナミクスの効率がさらに向上したほか、FDE(フェラーリ ダイナミック エンハンサー)を組み込んだサイドスリップコントロール(ver.6.1)を搭載している。限界領域でも自信を持ってドライブできるコントロール性を得たという。
ここで紹介するF8スパイダーは、前述したとおりF8トリブートのコンバーチブル版である。かつてオープンボディのスポーツカーといえば、クーペボディに比べてボディ剛性が低く、ハンドリング特性にも何らかの影響を与えてきた。だが、フェラーリV8ミッドシップモデルの場合は2世代前の458からクーペとスパイダーのポテンシャル差がぐっと縮まってきた。前作となる488シリーズにいたっては、私には違いがまったくわからないほどのレベルに到達していたと思う。
458より前のスパイダーモデルでは、不整路面などでステアリングホイールに微振動が明確に伝わってくる感覚があった。つまりは取り付け剛性が不足気味で、ハードコーナリング中にはこれが精神的な不安につながってしまったために、思い切りよく攻め切ることができなかった記憶がある。
しかし、488とF8のスパイダーであればそんな気遣いは必要ない。少なくとも公道レベルの速度では終始、クーペモデルと変わらないペースでワインディングクルージングを楽しめるまでに進化している。
なにより488からF8でもっとも大きく変わったと感じるのが、やはりステアリングホイールから伝わる安心感である。先ほど説明したのは「最近のフェラーリはスパイダーでもクーペ並みの安心感が得られるようになった」という話だが、今から述べようとしているのは「クーペ同士の比較でも、F8は488より格段に安心感が強い」という話題である。