普段使いができるスポーツカーを長年にわたり作り続けているポルシェ。それは街乗りからサーキット走行までを1台で楽にこなすことができる実力を備えているということである。まさに日常と非日常だ。ポルシェのその理想を高い次元で具現化したのがパナメーラではないだろうか。(Motor Magazine2021年3月号より)

外観の変更は目立たないが中味は大きく進化している

いうまでもなく新型は、2016年にデビューした2代目パナメーラのマイナーチェンジ版だが、ポルシェの慣例にしたがって、実にていねいなブラッシュアップが施されているのである。

注目点のひとつはエンジンのパワーアップで、GTSは最高出力が460psから480psに向上している。またトップモデルとなる新型ターボSは630ps(プラス80ps)と820Nm(プラス50Nm)を発生する(カッコ内は従来型ターボ比)。

もちろん新型は、シャシにも改良が施してあって、電子制御式可変ダンパーであるPASM、3チャンバーエアサスペンション、ポルシェトルクベクタリングプラス(PTVプラス)などを統合したPDCCスポーツの設定を見直すことでトラクション性能やコーナリング性能の向上を図ったという。より柔らかいコンパウンドと新しいトレッド設計を採用した新開発タイヤがコーナリング性能の改善に寄与しているのも間違いないだろう。

こうした緻密な改良に比べるとデザイン上の変化はごくわずかで、ターボSではフロントエアインテークの上部に全幅いっぱいまで伸びる2枚のフィンが追加されたのが目立つ程度だろう。GTSではフロントエアインテークの両サイドに設けられたCブレードと呼ばれるパーツがボディ同色となったことくらいしか気づかなかった。それでも、試乗すると思いもかけない発見がある点は、これまで登場した数々の新型ポルシェとまったく変わりなかった。

最初に試乗したGTSは、従来型パナメーラレンジの中でももっともお気に入りのグレードだったが、新型になって足まわりはさらに進化していた。率直にいうと、2代目にモデルチェンジした直後のパナメーラは、足まわり周辺のダンピングが不足しているせいか、路面から強い衝撃が加わった直後にブワブワっとした軽い振動が残る傾向があって、私はこれが苦手だった。

ところが、2018年に追加されたGTSはサスペンションのアッパーマウントを強化することで、このブワブワ感を解消したうえに正確なハンドリングも実現。やや硬めの乗り心地にしても、路面から受ける衝撃から鋭角的な部分が取り除かれているので、快適性は決して低くない。パナメーラレンジの中でもとりわけハンドリングが正確でステアリングフィールが豊富な点も、いかにもポルシェらしくてGTSに惹かれる理由のひとつだった。

一方、新型に生まれ変わったGTSは、ブワブワ感がないソリッドな印象はそのままに、サスペンションがしなやかさを増していて私を驚かせた。タウンスピードではスポーツカーらしい強力なダンピングが影を潜め、その分、足まわりが優しく路面をトレースする傾向が強まり、より柔らかな感触を味わえるようになったのだ。

その影響か、ステアリングフィールもより洗練されたものとなり、従来型より雑味成分が減少したように感じる。だからといってステアリングフィールが乏しいわけではなく、いかにもポルシェらしくフロントの接地性はしっかり伝わってくるのでご安心いただきたい。

今回の試乗では本格的にコーナーを攻めるような機会はなかったものの、ワインディングロードで軽く試した範囲でいえば、ポルシェらしい自然なステアリングレスポンスとリニアリティは健在で、安心してコーナリングを楽しめた。

もっとも、新型のコーナリング性能はおそろしく高く、タイヤのグリップ限界には到底、届かなかった。それでも適度な量のローリングやピッチングから自分のペースが限界の何割程度に相当するのかがおおよそ掴めるため、不安やもどかしさも感じずに済んだ。Z軸回りの慣性モーメントが小さく、重心が低く感じられる車両の基本レイアウトも、スポーツカーを操っている感覚をもたらしてくれる一因だろう。

画像: パナメーラGTS。「GTS」はポルシェ伝統のグランドツーリングカーの称号。その起源は1963年の904GTSに遡る。

パナメーラGTS。「GTS」はポルシェ伝統のグランドツーリングカーの称号。その起源は1963年の904GTSに遡る。

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