普段使いができるスポーツカーを長年にわたり作り続けているポルシェ。それは街乗りからサーキット走行までを1台で楽にこなすことができる実力を備えているということである。まさに日常と非日常だ。ポルシェのその理想を高い次元で具現化したのがパナメーラではないだろうか。(Motor Magazine2021年3月号より)

GTSとターボSの性格が明確に分けられている

続いて試乗したターボSは、GTSを最高出力で150psも上まわるハイパフォーマンスモデルゆえ、乗り心地はかなりスパルタンと想像されるかもしれないが、実際はその正反対で、スプリングレート自体はGTSよりもむしろソフトに感じられる。つまり、タイプ991までの911と同じで、GTSはスポーティ、ターボはラグジュアリーなグランドツアラーとキャラクターが明確に分けられているのだ。

これに伴って心配される例のブワブワ感は先代に比べて大幅に改善されており、不満を覚えなかった。その一方で乗り心地はソフトでありながらもグランドツアラーらしい重厚感に溢れているので、軽快なGTSとはひと味違った感触が味わえるだろう。

それでもスポーツ+モードを選べばGTSと同等のコーナリング性能を堪能できる。いや、最大トルクはターボSがGTSをなんと200Nmも上回っているためにコーナー間の加速はターボSのほうが圧倒的に鋭く、コーナーへの進入ではより高い速度域からの減速を強いられる。

このためダイナミックな印象ではターボSの方が一枚上手。こんな時にはセラミックブレーキのPCCB(ターボSに標準、GTSはオプション)が安心感溢れる制動力を発揮してくれる。ブレーキング初期の反応が過敏なセラミックブレーキが少なくない中、緩制動から優れたコントロール性をもたらしてくれる点もPCCBの美点である。

日常領域での快適性とスポーツ走行時のダイナミック性能。新型パナメーラは、そのバランスが今まで以上の高みに達していた。それは日常性と非日常性の巧みな融合といっても構わない。

その核となっているのが、ポルシェが中心となって開発したプラットフォームのMSBにあるように思う。低重心やZ軸モーメントの低減などを意識して開発されたこのプラットフォームが、スポーツ走行時にストレスを感じさせない機敏なハンドリングをもたらしてくれることは、旧型GTSをバーレーン国際サーキットでテストした際にも痛感した。

車重が2トンもある影響で、タイトなS字コーナーをヒラリヒラリとクリアするのはさすがに難しかったものの、それでも適切なタイミングで操舵すれば狙ったラインを確実にトレースすることができたし、ドライバーを不安に陥れるような唐突な挙動を示すこともなかった。しかも、サーキットで連続周回をこなしても音を上げることがない。この辺はさすがポルシェとしかいいようがなかった。

つまり、素性のよさを生かした日常性と非日常性の高度なバランスこそ、パナメーラの真骨頂なのだ。ライバルのように無闇にスポーツ性を強調していない上品なスタイリングも、血筋の良さの示す証明といえるだろう。(文:大谷達也/写真:永元秀和)

画像: ポルシェはパワーアップとともにブレーキ性能にも磨きをかけている。

ポルシェはパワーアップとともにブレーキ性能にも磨きをかけている。

ポルシェ パナメーラ ターボS 主要諸元

●全長×全幅×全高:5049×1937×1427mm
●ホイールベース:2950mm
●車両重量:2190kg
●エンジン:V8DOHツインターボ
●総排気量:3996cc
●最高出力:463kW(630ps)/6000rpm
●最大トルク:820Nm/2300-4500rpm
●トランスミッション:8速DCT(PDK)
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・90L
●WLTCモード燃費:7.6-8.3km/L
●タイヤサイズ:前275/35R21、後325/30R21
●車両価格(税込):2882万円

ポルシェ パナメーラGTS 主要諸元

●全長×全幅×全高:5053×1937×1417mm
●ホイールベース:2950mm
●車両重量:2190kg
●エンジン:V8DOHツインターボ
●総排気量:3996cc
●最高出力:353kW(480ps)/6500rpm
●最大トルク:620Nm/1800-4000rpm
●トランスミッション:8速DCT(PDK)
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・90L
●WLTCモード燃費:7.6-8.3km/L
●タイヤサイズ:前275/40R20、後315/35R20
●車両価格(税込):1949万円

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