普段使いができるスポーツカーを長年にわたり作り続けているポルシェ。それは街乗りからサーキット走行までを1台で楽にこなすことができる実力を備えているということである。まさに日常と非日常だ。ポルシェのその理想を高い次元で具現化したのがパナメーラではないだろうか。(Motor Magazine2021年3月号より)
なにひとつ犠牲にしないポルシェの遺伝子が色濃く伝わっている
ポルシェファンの多くは意外に思われるかもしれないが、パナメーラはポルシェの遺伝子や伝統を正しく受け継いだモデルであり、生まれるべくして生まれたスポーツサルーンといえる。
なぜ、私はそう考えるのか? スポーツカーメーカーであるポルシェは、高性能に加えて高効率であることを常に追求してきた。ライバルよりも小さなエンジンでより優れた動力性能や運動性能を実現するため、ポルシェはエンジンの高出力化だけにとどまらず、車両全体の軽量化、低重心化、エアロダイナミクス効率の改善などに精力的に取り組んできた。その集大成が911といっても過言ではなかろう。
これと並行して、スポーツカーのスペースユーティリティを追求することも、ポルシェの一貫した姿勢だった。ボディサイズの割に室内が広々としていることはその代表だが、911にリアシートが設けられていること、ラゲッジルームに余裕があることなども、ポルシェの遺伝子に組み込まれた特色といって間違いない。
そうした思想のごく自然な発露として、ポルシェは半世紀以上前から4シーターのスポーツカーを試作してきた。356ベースのタイプ530が開発されたのは1950年代のこと。それに続くタイプ754はやがて生まれる911に多大な影響を及ぼした。
その後もポルシェは928の4ドア版を試作。1988年に完成したタイプ989は、パナメーラと見紛うばかりのスタイリングを備えている。こうした長い伝統に培われて誕生したのが、ここで紹介する最新のパナメーラなのである。