2008年9月、2代目TTシリーズにTTとして初めてのSモデル「TTSクーぺ」が登場した。TTシリーズには「3.2クワトロ」があったが、シリーズのトップグレードとなるTTSクーぺはあえて2.0TFSIエンジンを搭載していた。アウディが考える特別なスポーティモデルとはどういうものだったのか。Motor Magazine誌では上陸間もないTTSクーぺを早速テスト、Sモデルの魅力に迫っている。今回はその時の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年11月号より)

TTSがドイツでの印象と異なったその理由

その理由をふたつ考えついた。ひとつは短い時間にエンジンの熟成が進んで、日本仕様は新しいコンピュータプログラムが組み込まれたのではないかということ。でも4カ月しかたっていないから、これは難しいかもしれない。

もうひとつはガソリンの違いだ。日本のハイオクガソリンのオクタン価は、どこのサービスステーションでも100を入れられる。しかしドイツではスーパープラスという一番オクタン価が高いガソリンでも98だ。最近100も増えてきたが、ドイツではまだ98が標準的である。TTSの指定ガソリンは、オクタン価が95(スーパー)または98(スーパープラス)だ。つまり一番低い91(ベンゼン)でなければ走れるエンジンなのだ。

日本ではハイオクガソリンを入れればオクタン価が100となり、ノッキングしにくいから低い回転数からターボのブースト圧を上げることができ、充填効率が上がりトルクを引き出すことができているのかもしれないと考えたのだ。

さらにこのエンジンは直噴だから、充填効率が上がった分だけダイレクトに、そしてリアルタイムで燃料噴射量をコントロールすることができるから、最適な燃焼状態を作ることができるというメリットもあるだろう。

もしそうだとしたらターボチャージャー+直噴という組み合わせの、さらなる奥の深さをみせられたという感じだ。アウディの「技術による先進」は、TTSでより深く感じられる。

カタログデータでは2500-5000rpmが最大トルクの発生回転数になっているから、2500rpmに達しないとトルクが弱いように予想する人もいるが、TTSのエンジンの性能曲線を見ていると2000rpmでも2.0TFSIの最大トルクである280Nmは発揮され、6000rpmオーバーまで280Nmはキープされる。だから実際に力強く走れる範囲は2000-6000rpmなのだ。

日本ではこの性能曲線通りに、低いエンジン回転数でも太いトルクを感じることができるのだろう。思い切りアクセルペダルを踏み込んで急加速したときにもホイールスピンせずにエンジンの力がそのまま加速力になるのはフルタイム4WDだからだ。TTSにクワトロの名前はつかないが、ハルデックスタイプの電子制御4WDなのだ。

TTSをドライブするとき、このエンジンは大きな魅力だし、アドバンテージになる。クランクシャフトが短い4気筒は良好なアクセルレスポンスを得られ、エンジンそのものの軽量化もできている。そしてアクセルペダルを深く踏み込むほどシートバックに押し付けられる長い加速を味わえるからだ。

単にパワーがあるということではなく、TTSのエンジンはアクセルペダルに従順だから品がいい。スポーツカーに大切な、ドライバーがコントロールできるトルクとパワーを持っているといえよう。

アウディは、フォルクスワーゲンとは別のエンジンをちゃんと仕立て、自分のブランドを築き上げようとしている気がする。Sモデルの名に恥じない洗練されたフィールを感じさせてくれる優れたエンジンだ。

同じことがサスペンションにも言える。TTSに標準装備されるアウディマグネティックライドの出来がいい。ノーマルモードで乗っているときには、ボディの揺れが大きくならない程度に軽く締まった感じの乗り心地で、路面の凹凸やアンジュレーションを吸収してくれる。そしてハイスピードになり大きなGを感じるようになると自動的に減衰力を高めて、ハンドリング性能が落ちないようにしてくれる。

だから一般道を飛ばす程度ならノーマルモードで十分対応できている。天気の良い日に箱根のワインディングロードを気持ちよく駆け抜けたが、大きくなりすぎないロール角やロール速度を守り、ピッチングもよく抑えられ、乗り心地とハンドリング性能は絶妙なバランスだった。

ノーマルモードで満足しつつも、セレクトレバーの左下にあるダンパーマークの付いたスイッチを押すと、初めから減衰力が硬めになるスポーツモードに瞬時に切り替わるのを試したくなる。走行中に切り替えるとステアリングフィールの変化とシートから伝わる振動の変化で体感できる。ハンドルを切る前からよりダイレクトな感触が掌に伝わってきている。そして実際に微小舵でのクイック感が増す。減衰力が高められロールが押さえられているから、バンプステアが働かずハンドル角とタイヤの向きがダイレクトになるからだろう。

特に直進状態から握り拳ひとつ分までのクイック感が増すから、走りの印象はまるで異なる。ワインディングロードでは軽快感が増し、TTSはよりスポーティになる。それでも乗り心地が大きくスポイルされていないところがアウディマグネティックライドの素晴らしさだろう。

日産GT-RやレクサスIS Fのように、走りに徹すると乗り心地が犠牲になってしまうのではなく、乗り心地とハンドリングの両方を引き上げるようにセッティングができている。

その秘訣はサスペンションのフリクションの小ささだろう。ボディに対して上下に動くサスペンションがまずしなやかに動くことができなければ、路面の凹凸やアンジュレーションを吸収できずに揺れや振動が多くなる。そしてしなやかに動くことは、ハイスピードになったときにも路面の凹凸やアンジュレーションに追従して動くことができるからロードホールディングも良くなるという簡単な理屈である。TTSをドライブしていると、サスペンションがしなやかに動くことを感じることができるのだ。

このしなやかに動くサスペンションがあるからアウディマグネティックライドも生きると言えよう。

ASF(アウディスペースフレーム)も進化している。アルミニウムとスチールを組み合わせた軽量化により、TTSを1500kgを切る重量で仕上げている。

画像: 272ps/350Nmを発生する2L TFSIユニット。高出力にもかかわらず10・15モード燃費は10.8km/Lを実現している。

272ps/350Nmを発生する2L TFSIユニット。高出力にもかかわらず10・15モード燃費は10.8km/Lを実現している。

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