長く待ちわびた新型フォルクスワーゲン ゴルフとの邂逅は、なかなかに幸せな時間となった。そこには確かにゴルフらしさという伝統が息づく。そして同時に「らしくない」部分も生まれている。8代目に対する評価は、その微妙な「競演」をどう受け止めるか、にかかっていた。(Motor Magazine2021年8月号より)

さらに伸びやかさを増した躍動的なハッチバックスタイル

このようにパワーユニットには多彩な新機軸が盛り込まれているゴルフ8だが、ボディなど基本的骨格は従来型からの「モジュール化プラットフォームMQB」をさまざまなリファインを施した上で踏襲している。ゴルフ史上初めてヴァリアントとの間にホイールベースの差別化が図られたのも特徴で、写真の印象には限られるものの、全長ともどもホイールベースも長くなり、躍動的なイメージが大幅に向上しているように思える。

そんなステーションワゴンに対し、ボディは30mmほど長くなる一方でホイールベースが15mm短縮されたハッチバックを目前にすると、改めて「どんなアングルから見てもゴルフそのもの」というたたずまいが印象的だ。

また、カタログ値では10mm狭まって1.8mを下まわった全幅も特徴のひとつで、少なくとも日本では「これ以上拡幅をされなくて良かった」と、感じる人が多いのではないだろうか。

「顔つきが精悍さを増した」という第一印象を覚えたのは、グリル上部と高さを揃え薄さを増したヘッドライトが見据える表情が、歴代ゴルフにない新しさであったゆえ。一方、後ろ姿は見紛いようのないゴルフそのもので、こちらは「マイナーチェンジ」と言われればそのまま信じてしまいそうだ。

リアエンブレムとして新しくなったCIが描かれているが、テールゲートオープナーとしての役割は新型でも踏襲されている。リアビューカメラを内蔵する凝った構造も同様だ。

画像: eTSI Rライン。クリーンなベースモデルのデザインを生かしながら、フロントバンパーやフェンダー部のエンブレムなどを専用アレンジ。

eTSI Rライン。クリーンなベースモデルのデザインを生かしながら、フロントバンパーやフェンダー部のエンブレムなどを専用アレンジ。

一方、このクラスでは稀有な存在だったダンパーで支えるフロントフードは、ついに「つっかえ棒式」へと方針転換。通常目にする部分ではないし恩恵に預かる頻度も少なく、確かにコストカットの際には真っ先に候補に上がりそうなパーツだが、だからこそゴルフというモデルのカリスマ性を象徴するアイテムでもあっただけに、微妙に残念だ。

それゆえにこれまで気にならなかったフードの重さも実感。「これほど重いならば、アルミ化での減量効果も大きいはずなのに」と、余計な思いも抱かされることになった。

さらに、ゴルフ8のもうひとつの代表的見どころと謳われているのが「デジタル化」だ。実感させられるのがダッシュボードまわりのデザイン。全グレードでバーチャルメーターを標準採用し、物理的なスイッチ数が大幅に削減されている。すっきりとモダンな雰囲気を強めた視覚的効果は、フルモデルチェンジを行ったことによる伸びしろを、もっとも明瞭かつ雄弁に語る部分でもある。ただし、デジタル化された機能を使いこなすためには、まずは詳しく知る人によるコクピットドリルが必須でもある。

さまざまな機能はディスプレイ上での操作が必要で、コマンドを呼び出すための手間が加わるなど、目視する頻度がかえって増してしまったように思える。ある意味、「触感より直感」という思想が進み過ぎているのではないだろうか。

欧州ではレンタカーとして多用される車種であることも考えると、ここはちょっと気になる部分。とくに、乗り換えを検討しているゴルフ7のユーザーは、使い勝手も入念に検証すべきだ。

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