広さなのか健全さなのか、車内空間それぞれの特徴
そんな律儀さこそがフォルクスワーゲンのブランドバリューであるとお思いの方も多いのでは、と思う。そんな視点でティグアンを見ると、まず目に留まるのはそのパッケージだ。40対20対40の分割可倒式後席を備えたラゲッジルームの使い勝手は標準的だが、前後席間や後席の座面高などの設定が理想的で、後席のパッセンジャーも視界を埋もれさせることなくゆとりをもって座ることができる。
パサートは、座席にせよラゲッジルームにせよその広さに驚かされるが、ティグアンはサイズ推しというよりは、空間の健全さがアピールポイントとなるだろうか。一方で残念なのはインフォテイメント、とくにナビゲーションシステムの扱いづらさだ。多分に慣れによる部分もあるとはいえ、目的地検索や設定には多くの手数を要し、ボイスコマンドも要領を得ない。
IDシリーズの展開に合わせてゴルフ8以降はMEBジュールと電子プラットフォームの共有化が図られていく。今回のパサートやティグアンにもその意向が込められているのだろうが、慣れ親しんだインターフェイスからの変化はすべてのユーザーに歓迎されるものではないのも確かだろう。
オーセンティックな価値観。安心を体現している存在
ライトサイジングコンセプトのEA211evo型1.5L 4気筒 TSIユニットは、1500rpmから250Nmを発揮することもあり、車重1.5tを超えるティグアンの車格でも動力性能的な不満はない。回すほどに伸びるパワーフィールや澄んだサウンドなど、やっぱりガソリンエンジンの良さもあるよなぁ、ということを再認識させられる。
加えて、そのノーズまわりの軽さが、ティグアンに車格を忘れさせる軽快感をもたらしているのも確かだ。Rラインでは曲がりの鋭さにタイヤのケース剛性の高さがちょっと勝りすぎている感もあり、その点、エレガンスの方がクルマとしてのバランスはいいと思う。だがこのあたりは、好み優先でも問題はない。いずれにせよ、こちらもクラスの範たるニュートラルな運動性能が備わっている。
多少顔つきが変わったとはいえ、パサートやティグアンのオーセンティックな佇まいは、個人的にはまさにフォルクスワーゲンらしい「安心」を体現しているように見える。もちろんそれはアルテオンやTロックが傍らにあってのこととはいえ、家族の一員として毎日を共にするパートナーというのは流麗で前衛的であり過ぎても困る、ということを彼らもよく心得ているのだろう。(文:渡辺敏史/写真:井上雅行)
フォルクスワーゲン ティグアンTSIエレガンス[TSI Rライン] 主要諸元
●全長×全幅×全高:4515×1840×1675mm[4520×1860×1675mm]
●ホイールベース:2675mm
●車両重量:1520kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●総排気量:1497cc
●最高出力:110kW(150ps)/5000-6000rpm
●最大トルク:250Nm/1500-3500rpm
●トランスミッション:7速DCT(DSG)
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・60L
●WLTCモード燃費:15.5km/L
●タイヤサイズ:235/55R18[255/45R19]
●車両価格(税込):483万9000円[503万9000円]
フォルクスワーゲン パサートTDIエレガンス アドバンス[ヴァリアントTDI Rライン]主要諸元
●全長×全幅×全高:4790×1830×1470mm[4785×1830×1510mm]
●ホイールベース:2790mm
●車両重量:1560kg[1610kg]
●エンジン:直4DOHCディーゼルターボ
●総排気量:1968cc
●最高出力:140kW(190ps)/3500-4000rpm
●最大トルク:400Nm/1900-3300rpm
●トランスミッション:7速DCT(DSG)
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:軽油・66L
●WLTCモード燃費:16.4km/L
●タイヤサイズ:235/45R18[235/40R19]
●車両価格(税込):534万9000円[584万9000円]