最新世代ティグアンに見る、ゴルフ8との本質的な近似性
AD1型ティグアンの日本導入は2017年、4年ぶりのフェイスリフトとなる。こちらはヘッドライトユニットやボンネット、フェンダーなどの変更も伴う大規模な意匠変更が施された。目尻をホイールアーチのそばまで伸ばしたヘッドライトのグラフィックは、ゴルフ8のそれにほど近い。
内装はパサートと同様に空調コントロールのタッチパネル化やインターネット常時接続型インフォテイメントシステムへの更新、スポーツ系のグレードではハンドルに配されるコントロールスイッチ類も、ハプティックフィードバック付きのタッチパネルにフラットに組み込まれた。先進装備系についても「トラベルアシスト」は全グレード、「IQ.ライト」もベースグレードを除いて標準装備だ。
パワーユニットはパサートと同様で、ガソリンのTSIが1.5L化された一方、TDIについては、導入未定だという。現状の駆動方式はFFのみだが、2021年秋に上陸予定のティグアンRは320ps/420Nmを発揮する2L直4ターボに4モーションの組み合わせとなる。つまり、これが日本のフォルクスワーゲンSUVラインナップでもっともスポーティなモデル、というわけだ。
パサートTDIの特質と驚くほどのニュートラルさ
今回試乗したパサートのパワートレーンがともにTDIで、セダンがデジタルメータークラスターや大画面ナビ&インフォテイメントシステム、アラウンドビューカメラやヘッドアップディスプレイなどが標準装備となる「エレガンスアドバンス」、ヴァリアントは専用エクステリアやスポーツシート、アダプティブダンパーや19インチタイヤなどが標準装備となる「Rライン」を用意した。ちなみにセダンにRラインの設定はない。
パサートに搭載される2LのTDIユニットは従来のEA288型を踏襲している。同門のアウディはすでにそのリファイン版であるEA288evoを投入しており、世代的にはやや旧いことになる。だから・・・というわけではないが、2つの特質は承知しておくべきだろう。
ひとつはノイズレベルがやや高く、微細な振動とともに、ややザラ味の強い回転フィールであること。この点はとくに速度域の低いシティライドの環境で気になるところだが、絶対音量というよりもインジェクターなどの作動音の硬質さという、音質的な透過による部分が大きいかとも感じさせる。
もうひとつは1500rpm以下での極低回転域のトルク感に乏しく、アクセルペダル操作に対する反応がダルなことだ。こちらは加減速の緩いシティライドよりも心地よいペースでワインディングを走るなど駆動力のオンオフ幅が大きくなってくると目立つ。
ただし、2000rpmほども回っていればレスポンスは十分。400Nmのトルクを前輪のみで受け止めるということでトルクステアも覚悟するが、トラクションコントロールが巧く介入するため、ウエットのワインディング路でも不安なく右足を踏みこむことができた。そこから4500rpm向こうまではパワーの急激なドロップもなく特性は素直だ。速さも十分以上で、190psのゆとりをしっかりと感じさせてくれる。
乗り心地については18インチ+固定式ダンパーのセダンと19インチ+DCC(アダプティブシャシーコントロール)ダンパーのヴァリアントとで、大きな差はない。共に轍などに保舵を引っ張られることもなく、低速域からの無粋な突き上げなども丸められており、しっとりと上質なライドフィールが描けている。
強いていえば、大きな凹凸の乗り越えなどではヴァリアントの方が衝撃が強い感はあるが、キャラクターを鑑みればこれも十分に許容範囲だ。ハンドリングも特筆するほどのスポーティさはないが、そのぶん尖りすぎて煩わしいところもない。踏めば踏んだ分だけ走り、停まり、切った分だけ綺麗に曲がる。
誰もが想像する、同じMQBモジュールを用いたゴルフのダイナミクスの延長線上にあって、見事に車格分の上質さも上乗せされている。言葉にすると元も子もないが、徹頭徹尾ニュートラルで粘り腰の姿勢は感動・・・というよりもただただ感心するばかり。なんでこんなに真面目に走れるのか、と。