コーナリングの大前提はブレーキングがしっかりできてスピードをコーナリングに適したところまでコントロールすること。その基本は変わらないが、ABSの搭載が当たり前となった現代の市販車で、このテクニックもちょっと変化してきているので解説していこう。

昔はリレーを外してABSを解除、ということもあったが・・・

サーキット走行でタイムを縮めるには、アクセルペダルの踏み替えとブレーキングの間にタイムラグを作らないということも重要になるし、20%のスリップ率のところまで一気に踏み込むということも重要になる。そして、必要な地点までブレーキ踏力は一定、もしくは徐々にリリースしていく。

コーナーの入り口ではブレーキペダルのリリースとステアリングワークとシンクロさせる・・・と、ひとつひとつ見ていくと非常に奥が深い。この辺は、本連載第4回の荷重移動でも解説しているところなので参照して欲しい。

また、サーキット走行であってもコーナーで常にフルブレーキングが求められるわけではない。高速コーナーの手前ではアクセルオフだけで行ってしまったり、緩いブレーキをかけたりということもある。この辺は「ブレーキは常に20%のスリップ率で」などと考えると、タイムも出ないし危険でもあるので柔軟に対処したいところだ。

当然のことだが一般道でドライビングを楽しむには、こんな限界ぎりぎりのブレーキングは必要ない。クルマやタイヤと対話をしながらのドライビングを楽しむということであれば、コーナー手前でアクセルペダルを抜いて、4輪へ均等にGがかかってから、ブレーキを踏んでフロントに荷重をかけて、ステアリングを切り込んで・・・というように余裕を持たせたほうが安全に楽しく走れるだろう。

画像: イラスト:きむらとしあき

イラスト:きむらとしあき

現代のクルマはABSが標準装備となっている。昔は「邪魔だからリレーを外して解除して・・・」ということもあったが、今は性能も上がり、そんな必要もなくなった。また、ABSありきでセッティングされていることもあるから、熟考なしに解除してしまうと危険でもある。

ABSの付いたクルマでフルブレーキングをする場合には、作動させた方がいいこともある。とあるトップドライバーは、「ABSを効かせっぱなしでヒール&トゥで減速できればいいんだよね」と語っていた。これならば「踏力を一定にする」ことにあまり気をつかう必要もなくなるから、ビギナーにとってはかえって楽な面もある。これはクルマの進歩によってドライビングが変化してきたとも言える。

何より安心なのは、ABSが効いていれば、ステアリングも効くということだ。タイヤがフルロックしてしまえば、いくらステアリング操作をしても、クルマは言うことを聞いてくれない。とくに雨の日のハイスピードドライビングで、ABSはドライビングの失敗をリカバーしてくれる。やばいと思っても、なんとかなる場合もあるのだ。(文:Webモーターマガジン編集部 飯嶋洋治/イラスト:きむらとしあき/写真:井上雅行、日産自動車)

レーシングカーでABSの装着が規則で許されていない場合は、ロックぎりぎりの人間の感覚が頼り。本文のとおり具体的にはスリップ率20%。フルブレーキングが必要なときに一気にそこまで持って行ければベストだ。

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