ただし、制動時に駆動方式は関係ない
FFでは旋回中にアクセルオンをするとフロントタイヤが空転することによってアンダーステアが出やすい。加速時にもホイールスピンしやすく、気持ちばかり焦ってクルマが前に進まないことも起こりがちとなる。基本はクルマの姿勢を変えたところで徐々にアクセルを入れ、完全に出口を向いたらアクセル全開となる。
ただウエット路を含めた低ミュー路は、コーナリング進入で姿勢を作りやすい面もあるから、コーナー前半でクルマの姿勢を大きめに変えて、アクセルオンで前に引っ張るような走りも有効になる。この辺はテクニックの見せ所だろう。ダート路面や雪上で見られるシーンでもある。LSDが装着されたクルマならば、そういう走りがより効果的でRWD車よりも有利になる部分だ。
さらに有利なのが4WDだ。パワーが同じなら、4WDのタイヤは2WDの半分のパワーを受け止めているだけだ。パワーが分散されているぶん、ホイールスピンしづらいし、ホイールスピンをしてもアウトに膨らむだけで大きく姿勢を崩すこともない。コーナリングに入ってからの姿勢の安定という意味では2WDを大きく引き離す。ただし、制動時に駆動方式は関係ないので調子に乗りすぎは注意が必要だ。
ハイドロプレーニングにどう対処するか?
ウエット走行で一番怖いのはハイドロプレーニング現象だ。これには公式がある。アメリカのNASAが導き出したもので、63にタイヤ空気圧の平方根をかけた値がハイドロプレーニングを起こす速度というもの。具体的に数値を計算すると、タイヤの空気圧が2kg/平方センチで89km/h、3kg/平方センチならば109km/hでハイドロプレーイングが起きることになる。前提としてタイヤの溝は水深よりも深くなければならない。
かつてS耐でランサーエボリューションを駆っていた中谷明彦/木下隆之組が、大雨の中で上位クラスを退け優勝したことがあったが、この時もこのセオリーを使い、できるだけタイヤの空気圧を高めたという話を中谷選手から聞いたことがある。(文:Webモーターマガジン編集部 飯嶋洋治/イラスト:きむらとしあき)