パワートレーン系に見る理想を実現させる方策
そして、フロントフードの下には、カイエン用をベースに大幅なリファインが施されたV型8気筒の4.8L直噴エンジンが搭載される。
現時点で発表されているパナメーラのラインナップはS/4S/ターボという3タイプ。うち、前二者には最高出力400ps/最大トルク500Nmという自然吸気ユニットが、また後者には同じく500ps/700Nmというツインターボ付きのユニットが搭載される。
パナメーラ用エンジンの大きな特徴は「カイエン用ではアルミパーツを用いた多くの部分をマグネシウムパーツへ置き換えたことと、(4WDモデルの場合の)フロントドライブシャフトの位置をエンジン本体に対して大幅に上方へ引き上げたことの2点」であるという。
実はパナメーラの開発に際しては「卓越した効率性とパフォーマンスの獲得」が目標に掲げられ、エンジン関係ではこれ以外にも、オンデマンド式のパワーステアリングポンプの採用や、エンジン冷却水温度管理の最適化といった項目もその一例として挙げられている。
そんな項目の中で、やはり最も注目に値するのは、全モデルに標準装備されたオートスタート/ストップシステムだろう。最新の欧州モードでの計測法では、これによって0.6L/100km(約1.7km/L)の燃費向上を見込めるという。
ただし、そんなデバイスの採用にもかかわらずパワーステアリングは油圧式のままといった、すぐには納得し難いポイントもある。
「アイドリングストップ中に操舵力を加えても、パワーアシストを働かせるためにエンジンをスタートさせるといった制御は行わない」というが、それが不自然さを生む原因とならないのか否かは、自らテストドライブを行う時を待つ以外にない。
2ペダル式のトランスミッションは、911カレラやケイマン/ボクスターに採用済みの7速デュアルクラッチ式トランスミッション、PDKである。そのユニットはもちろん「ターボ」の最大トルク700Nmにも対応した新作で、ポルシェの作品らしく「ローンチコントロールの機能も採用」とのこと。
さらに「AT比では、0.8L/100km(約2.2km/L)相当の燃費改善効果がある」というのは、100km/h走行時でのエンジン回転数がわずか1000〜1100rpmに過ぎないという7速ギアでの、クルージング時の省燃費効果がかなり大きそうだ。
もう一点、駆動系で見逃せない新技術は、驚くほどコンパクトにまとめられた4WDモデルの前輪駆動システムである。トランスミッション後方右側からベベルギアを介し、車両中心線に対して右側へ11度の角度で前方へUターンしたアウトプットシャフトは、エンジン後部右下にレイアウトされたフロントデファレンシャルへと、電子制御式多板クラッチ型トランスファのPTMを介してエンジントルクを伝達。さらに、デフから左右に伸びたドライブシャフトは、左側がエンジン後部下側を貫通する構造で前輪を駆動する。
ちなみに、メルセデス・ベンツやBMWの各モデルでは、この一連のレイアウトがセンタートンネルのフロント右側を大きく張り出させてしまうため、乗用車系4WDモデルでは右ハンドル化が成立していない。
だがパナメーラでは「もちろん4WDモデルにも右ハンドル仕様を設定する」という。さらに、フロントエンジン車ながらパナメーラが驚くほどに低いフード高を実現させているのも、このフロントドライブシャフトの位置が肝要のようだ。
なぜなら、エンジニア氏が自らの両手を用いて表現してくれた「エンジン本体とドライブシャフト位置の、カイエン用との高さ方向の違い」は、軽く15cmほどにも達しているように見えるものだったからだ。