ド・ディオンアクスルはデフをボディ側に固定してサスペンションを動かす
リーフリジッド式でも、コイルスプリングでリンクを使ったリジッド式でも同じだが、駆動輪にリジッド形式を採用すると、デファレンシャルギア(デフ)と一体になったホーシング(ハウジング)をスプリングとショックアブソーバーで支えなくてはならない。
サスペンションの動きを考えると、路面への追従性を良くするためバネ下荷重を小さく、デフを一緒に動かしたくはない。そこでデフをボディ側に固定して、サスペンションだけを動かしてしまおうと考えたのがド・ディオンアクスル式だ。
もちろんデフをそのままボディに固定してしまうと、サスペンション自体が動かなくなってしまう。そこでデフ側とタイヤ側にカルダンジョイント(自在継手)などを使うことによって、タイヤの上下動を可能としている。
こうなると、独立懸架式に近いようにも思えるが、左右のハブの間は鋼管製の車軸で結ばれているのでリジッドアクスル式に分類される。
リーフスプリングを用いた場合、それでサスペンションの位置決めができるので、比較的シンプルな機構で構成できる。一方、コイルスプリングを用いた場合に前後方向の位置決めをトレーリングアームで行い、横方向の位置決めにラテラルロッドなどを用いられる。これはリンクを使ったリジッド式と同様だ。
かつては主にFRに採用されていた形式だが、エンジンとトランスミッションを一体としたトランスアクスル方式のMRやFFにもこの方式が使われる。トランスアクスルでは事実上、アクスルの上にデフを載せることができないので、リジッド式を採用すると、必然的にド・ディオンアクスルとなるのだ。RRのルノートゥインゴや、2021年に生産を終了した軽トラックのホンダ アクティなどがその一例だ。
サスペンションの動きの特徴は、リジッド式と同じく上下運動によるキャンバー変化はおきない。片側のタイヤの動きによって、もう一方のタイヤの動きも連動してしまうのもリジッド式と同様となる。ただ、リジッド式と違い、タイヤ側のジョイントを利用することによって、あらかじめトー角やキャンバー角を付けられるという面はある。
バネ下荷重の低減により一般的な駆動輪に採用したリジッド式よりロードホールディングが向上するという意味で、高性能なサスペンション形式と言えるだろう。(文:Webモーターマガジン編集部 飯嶋洋治)