歴代アルファのV6は設計こそ古いがその魅力に取り憑かれた人も多い。現行のアルファロメオ ジュリア2.9 V6ビターボ クアドリフォリオに搭載されている新世代へと変わったV6もまた、そのハンドルを握るものを虜にする。(Motor Magazine2021年11月号より)

アクセルペダルを踏み込むとジキルからハイドへ変身

画像: アルファロメオ ジュリア 2.9 V6 ビターボ クアドリフォリオは、専用のスポーツレザーステアリングを装備する。パドルシフトはアルミの削り出し。メーターはアナログ式だ。

アルファロメオ ジュリア 2.9 V6 ビターボ クアドリフォリオは、専用のスポーツレザーステアリングを装備する。パドルシフトはアルミの削り出し。メーターはアナログ式だ。

ただ、それはエピソードとしては面白いかも知れないけど、もっとも大切なところではない。目を向けるべきは、この2.9L V6ツインターボの真髄。本当に素晴らしいパワーユニットなのだ。

低回転域ではジキル博士、上まで回せばハイド氏。使い古された言葉ではある。6500rpmで510psを解き放つから、パワーに不足など一切感じない。アクセルペダルを一気に奥まで踏み込むと、285/30サイズのファットな後輪が、あっさりグリップを放棄するほどなのだ。

けれど、「豹変」という言葉は似つかわしくないだろう。最初はその瞬発力に驚いて少しうろたえたりもするが、注意深く観察していると、ジキルからハイドへの変化が、実に緻密かつシームレスな流れの上にあるということがわかってくる。

ふたつのターボチャージャーは3000rpmを超えるあたりから存在感を強めてくるけれど、どこかのタイミングでいきなり力を爆発させるためのものではなく、アイドリング時から最高出力を発生する6500rpmまで極めて直線的にパワーを増幅させ、2000rpmから540Nm以上の太いトルクを発生し続けるために存在しているのである。だからどこから踏んでいっても強烈に速いし、吹け上がりの素早さに慣れさえすればパワーとトルクを適切にデリバリーできるようになる。スポーツエンジンとして、素晴らしく優秀なのだ。

とてつもなくセンシュアルなイタリアンV6は、そこにあるだけで幸せ

画像: 普通に走っている時間も、十二分にエモーショナル。移動することそのものを楽しみたくなるクルマだ。

普通に走っている時間も、十二分にエモーショナル。移動することそのものを楽しみたくなるクルマだ。

しかも回転が上がっていく時のフィーリングは抵抗感なしの滑らかさだし、V6特有のごく微かな雑味の混じった乾いたビートは、回転が高まるにつれて次第に透明度を増しながら、ドライバーを包み込んでいく。快感、とはこのことだ。しかも常軌を逸して飛ばさずとも、普通に走っているだけで心が次第に蕩けていき、口元が緩む。とてつもなくセンシュアルなエンジンである。

そういえばギブリやレヴァンテ、クアトロポルテといったマセラティに積まれている3LのV6ツインターボも、性格としてはもう少しGT色が強いし、上に艶っぽさの塊のようなV8ツインターボがあるせいで評価はそちらに偏りがちだけれど、十分以上の速さを見せてくれるし、何よりそのサウンドにはやはり心がくすぐられる。こうしたエモーショナルな喜びが標準で備わっているのがイタリアンV6エンジン、なのだ。そこに触れるだけで幸せな気分になれる。

BEVはBEVで楽しい乗り物だ。けれど味わいが濃密な内燃機関には、バッテリーとモーターのクルマに簡単には置き換えられない重要な役割が、まだまだあるのだと思う。(文:嶋田智之/写真:永元秀和、井上雅行、マセラティS.p.A.)

アルファロメオ ジュリア2.9 V6ビターボ クアドリフォリオ主要諸元

●全長×全幅×全高:4635×1865×1435mm
●ホイールベース:2820mm
●車両重量:1710kg
●エンジン:V6DOHCツインターボ
●総排気量:2891cc
●最高出力:375kW(510ps)/6500rpm
●最大トルク:600Nm/2550rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・58L
●タイヤサイズ:前245/35ZR19、後285/30ZR19
●車両価格(税込):1174万円

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