BEVに限って言うとそのモデル数はまだ限られているが、コンパクトカーからSUV、4ドアセダン、スポーツカーと意外と種類はある。そこでいま、日本に導入されているBEVモデルを見ていこう。(Motor Magazine 2022年1月号より)

※タイトル写真はアウディeトロン スポーツバック。航続距離:335~423km/価格:1145万~1291万円。クーペスタイルのSUVで、フロントとリアに電気モーターを搭載する4WDだ。最高出力は300kW、最大トルク664Nmを発生する(e-トロン スポーツバック55)。オプションのバーチャルエクステリアミラーは、サイドミラー部に設置された小型カメラにより、ドア内側のディスプレイに後方視界が表示される。回生ブレーキの効きは3段階の調節が可能で、事実上のワンペダルドライビングが可能になる。

エンジン車とは一線を画すBEVの斬新な乗り味

「日本は遅れをとっている」というフレーズが半ば定説のごとく語られるようになって久しい、「自動車の電動化」に対する世の動向。

直近では、「中国を含む先進国でのBEV、FCV販売比率を2030年に40%、2035年に80%、2040年に100%にする」と、自身の将来計画を端的に表明したホンダの周辺が喧しくはあるものの、最終合意にまでは至っていない地域が多数ある。

純エンジン車を近未来に販売禁止する意見を表明する欧州を中心とした諸外国や、それに準じた規制をかけようとする各国都市部の動き、そして何よりも「市場が受け入れるのであれば」といったエクスキューズを加えながらも、アウディやジャガー、そしてボルボやメルセデス・ベンツなどによる近い将来の「BEV専業化」というメーカー自身によるインパクトあふれる宣言を耳にすると、どうしても冒頭に掲げたような印象を抱かれてしまうことは事実というほかないだろう。

最近になって、カーボンニュートラルを実現させた燃料を用いることで、何とか内燃機関の生きる道を探ろうという意見も聞かれるものの、それでもやはり「テールパイプエミッションが完全にゼロ」というBEVのわかりやすい特徴を前にすると、いかんせん説得力が弱い感は否めない。

画像: アウディ e-トロン。航続距離:335~423km/価格:935万~1256万円。アウディ初のSUV電気自動車。フロントとリアに1基ずつ電気モーターを搭載し、4輪を駆動する。71kWhのe-トロン 50と95kWhのe-トロン 55があり、それぞれの航続距離は335kmと423km。

アウディ e-トロン。航続距離:335~423km/価格:935万~1256万円。アウディ初のSUV電気自動車。フロントとリアに1基ずつ電気モーターを搭載し、4輪を駆動する。71kWhのe-トロン 50と95kWhのe-トロン 55があり、それぞれの航続距離は335kmと423km。

実際、CO2の削減こそが大義でありながらも、BEVとPHEVという充電対応モデルに対してのみ強力なインセンティブが与えられる欧州で、この2タイプのモデルが売り上げを伸ばしている現実もあり、次々と市場に投入される充電対応のニューモデルたちが、そのまま日本市場に導入される機会も増えている。

このところはホンダeやマツダ MX-30、レクサス UX300eなどと、欧州での販売を目論む日本車もBEVのカテゴリーへと名を連ねるようにはなっているものの、いずれも母国日本に対しては販売予定台数が極端に少なかったりするなど「BEVの本流はヨーロッパ発の輸入車」という印象はやはり拭えず、ここでもまたまた冒頭のフレーズがスポットライトを浴びることになってしまう。

かくして、日本に導入される欧州発のBEVが着々と増えつつある中、それらをチェックする機会も必然的に増している。もちろん、基本的には欧州市場にこそ適性を合わせたモデルばかりではあるものの、日本の急速充電規格=「CHAdeMO(チャデモ)」への対応を図るなど、日本での使用に対しても便宜が考えられていることもまた事実。ただし、率直なところ、大出力を発生可能な充電器はまだほとんど整備をされていないなど、BEVを取り巻く環境が整っていないことを実感させられる場面も少なくない。

それでも現在、日本に導入された欧州発のBEVを試してみると、既存のエンジン車とは一線を画した斬新な乗り味に唸らされることは決して少なくないのである。

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