目指せ「3分で100km分」充電。一般道でもスポット設置を検討中
充電インフラの数が十分ならもっとEVが普及するはず、という見方はもちろんある意味正しい。けれど、結局は「卵と鶏」の関係と同じ。どちらにしてもボトルネックは消防法などの法規制に他ならない。施設の設置ひとつとっても、戦略的な緩和が必須となることは言うまでもない。
2030年までに急速充電スタンドを現行の約4倍、ガソリンスタンド並みの3万基に増やす方針が、2021年に政府からすでに発表されている。普通充電器の設置目標は12万基だ。ちなみにバイデン政権は北米全土で50万カ所、欧州は300万カ所という目標(いずれも普通と急速を合わせたもの)を掲げる。
もっともこれについてはトヨタ自動車の豊田章男社長が「数だけ、接置だけを目標にしてほしくない」と発言しているが、まさに然り。どうせなら量より質を考慮に入れながら、最適な充電環境づくりに戦略的に取り組んで欲しいものだと思う。
ABB(グローバルでエンジニアリング事業を展開する多国籍企業。世界85以上の市場で68万台以上の電気自動車用充電器を販売)の充電インフラ「Terra 360」は、コンボ規格の360kWなら3分以内で航続距離100kmを充電できる。もはや、給油並みの「気遣い」で済みそうだ。しかも1基の設置で最大4台の車両を同時に充電できるというから、充電渋滞の不安も軽くなるだろう。ただし同じ機種でもCHAdeMO方式を使う場合は今のところ、150kWが最速とのこと。ちょっと残念。
一方国内では、2025年までには既存の急速充電施設のほとんどを90kWで2台以上同時に充電できるように整備が進んでいると言われている。すでに、日本の充電サービスプロバイダーであるe-Mobility Powerが、ABBのベストセラー充電器「Terra 184」を250基、導入することなった。
さらにその導入に当たっては、高速道路だけでなく公道上への設置などについても検証されたとのこと。神奈川県横浜市青葉区で官民合同による実証実験が実施され、EVユーザーからは非常に好評を博したそうだ。
また150kWでこそないものの、首都高速大黒パーキングエリアでは2021年末からスタイリッシュな新型急速充電器の運用が始まっている。6台同時充電が可能なのは、実用面でもそうとう優秀だと思う。
まとめ ────── ニーズに合わせた戦略的な「ポイント設置」が重要かも
結論としては、CHAdeMOにはこれからの充電インフラを担うポテンシャルが確かにある。しかしその才を生かすも殺すも、結局は使い方次第、ということになるのだろう。だからこそ政府が掲げる「3万基への拡大」計画の「質」には興味津々だ。
できるならまずは150kWの採用拡大を願いたいところ。ともあれ、すべてをやみくもに超急速充電にする必要はない。コストパフォーマンスはやっぱり大事。たとえば道路交通網のハブと思われる地点を中心に、同時に複数台の継ぎ足し充電が可能なハイスペック充電施設を計画的かつ戦略的に配置することが必要なのではないか、と考える。
もともと自然災害が多い日本で生まれただけに、急速充電システムとしては唯一、外部給電を規格化しているなどCHAdeMOならではのユニークセールスポイントもしっかりある。ガソリンの給油とあまり変わらないくらいの充電時間で次の休憩場所までしっかり走ってくれる、という安心感が備われば、十二分にEVを普及する後押しになる。
トヨタを始め、国産メーカーのEV戦略は急激に加速しつつある。日産、三菱のアライアンスによる新型軽EVなど、手ごろな車種バリエーションもこれから増えていくことだろう。これから数年はまさしくEVの、クルマとしての魅力を広く知ってもらうことができるチャンス到来だ。
「やっぱり不便で使えない」と、ユーザーからそっぽを向かれてしまっては、実にもったいない。「いつかは明るいEVライフ」を期待している潜在ユーザーのためにも、一日も早く高性能なCHAdeMOが普及することを期待したい。