16代目クラウンのメタモルフォーゼは、想定の3歩半ぐらい先を行くものだった。SUV系モデルを中心とする伝統的セダンスタイルからの脱却には、改めて「クラウンのブランディングをゼロから始める」という、トヨタの強い意志を感じる。果たしてこのクロスオーバースタイル・・・アリ?ありあり??

ターボと電気モーターで「ブースト」する

TNGAプラットフォームそのものは、RAV4やハリアーなどで採用されているSUV用「GA-K」をベースにしていると思われる。ただし、新開発マルチリンク式サスペンションやインバーターと電気モーターを統合した「eAxle」などに対応するために施された改良は、数多い。

画像: 走行性能と快適性、実用性のバランスを極めるためにTNGAは徹底的な改良が施された。

走行性能と快適性、実用性のバランスを極めるためにTNGAは徹底的な改良が施された。

ホイールベースの数値やワイドトレッド化といった要素も含めて考えると、レクサスRXで採用された進化版の「GA-K」プラットフォームをさらに新型クラウン用に最適化したものと考えていいだろう。

もちろん新型クラウンは、RXに対して全高は150mm近く低く、全長は130mmも長いことから、まったく異なるイメージが表現されていることは言うまでもない。

画像: 高トルクな2.4L DOHCターボユニットは、高効率なツインスクロールターボとD-4ST(センター直噴システム)を備える。

高トルクな2.4L DOHCターボユニットは、高効率なツインスクロールターボとD-4ST(センター直噴システム)を備える。

トヨタブランドとして新たに採用された「デュアルブーストハイブリッドシステム」は、エンジンに2.4L直4DOHCターボのT24A-FTS型ユニット(272ps/460Nm)を採用。エンジンと6速ATの間に電気モーター(83ps)を挟み、さらにリアにeAxle(80ps)を配する。システム最高出力は349psに達している。

そもそも「トヨタ シリーズパラレルハイブリッドシステム」と呼ばれる従来型から継続されるハイブリッド(15代目の時は「ダイナミックフォースエンジン」と呼ばれていたが・・・)は、2.5L 自然吸気直4エンジン(A25A-FXS)と電気モーター(前のみ)の組み合わせ。それでも十二分に「ストロングハイブリッド」だった。デュアルブーストではそこからさらに、115psものアドバンテージを生んでいるのだ。

加えて電気モーターは、単なる駆動力のアシストだけでなくターボラグを補うための緻密なトルク制御も担っているとのこと。パッケージあたりの出力性能が優れるバイポーラ型ニッケル水素バッテリーと、リニアなDirect Shift-6ATとの組み合わせによって、スムーズかつダイナミックなパワーフィールが極められていることだろう。

2.5L ハイブリッドは、大幅な燃費向上が嬉しい

このデュアルブーストは、従来の3.5L V6DOHCユニット8GR-FSX型を2モーターでアシストする「マルチステージハイブリッドシステム」に代わる、アスリート志向に振ったユニットと言っていい。ただし、システム最高出力そのものはこれまでの359psに対して349psと、ややマイルドな数値に収まっているのが不思議ではある。

画像: 新型クラウンでは「E-Four Advanced」と呼ばれる、電気式4WDシステムを採用。前後駆動力配分は100:0~20:80の間で制御される。

新型クラウンでは「E-Four Advanced」と呼ばれる、電気式4WDシステムを採用。前後駆動力配分は100:0~20:80の間で制御される。

もっとも、細かくスペックを見ていくと、その印象が表面的なものでしかないことがわかるだろう。まずはエンジンの100Nm以上もの圧倒的なトルク差に驚かされる。しかもその発生回転数が、新型の2Lターボではわずか2000rpmから立ち上がっていく。前後モーターの出力・トルクからも、その圧倒的なスポーツ性が窺えると思う。

さらに新型では、全モデルがクロスオーバー化にふさわしい4WDとなっていることも大きな特徴だ。先代の2.5Lハイブリッドには、トランスファーにトルセンLSDを用いたフルタイム4WDシステムが設定されていたが、新型ではどちらのハイブリッドシステムも、後輪を別の電気モーター(デュアルブーストはeAxleユニット)で駆動する。

ただし2.5Lのシステムは前後駆動力配分を100:0~80:20に制御する「E-Four」で、デュアルブーストの「E-Four Advanced」は100:0~20:80と、より積極的に後輪にトルクを配分する。ここでもキャラクターに合わせた差別化が図られている、ということだろう。

全輪での駆動は操縦安定性を高めることはもちろんだが、「E-Four Advanced」ではさらに、発進時や直進加速時、コーナーの脱出時などの状況に合わせて、極めて緻密に駆動力配分の制御を行ってくれるという。ステアリングの切りはじめにまで可変領域の調整を加えるなど、ドライバビリティの心地よさを徹底的に追求しているようだ。

■クラウン 主要諸元 新旧比較

画像: 単純に車両価格だけ見ると、新型クラウンはずいぶんリーズナブルに思える。価格帯は先代が489万9000円~739万3000円なのに対し、新型435万円~640万円と、およそ50~100万円近くダウンしている。

単純に車両価格だけ見ると、新型クラウンはずいぶんリーズナブルに思える。価格帯は先代が489万9000円~739万3000円なのに対し、新型435万円~640万円と、およそ50~100万円近くダウンしている。

ちなみに同じくバイポーラ型ニッケル水素バッテリーを採用した2.5Lハイブリッドも、先代クラウンRSのシステム最高出力は226psから8psほど出力向上を果たしている(234ps)。こちらで注目しておきたいのは、その燃費の伸びしろだ。

■WLTCモード燃費 新旧比較 

15代目 RS(2.5L ハイブリッド) → 16代目 クロスオーバーG(2.5Lハイブリッド)<同RS:2.4Lターボ ハイブリッド>
・総合燃費    20.0→22.4<15.7>km/L
・市街地モード  17.2→21.2<12.6>km/L
・郊外モード   20.8→23.8<15.8>km/L
・高速道路モード 20.9→22.1<17.6>km/L

新型クラウンのA25A-FXS型ユニットは、バッテリーのみならず低フリクションオイルや電動ウォーターポンプを備えた可変冷却システムの採用によって、燃費性能も高められている。トヨタ流のハイブリッドとしては、世代的にはいわゆる第4.5世代に当たるのかもしれない。WLTCモードの燃費をよく検証してみるととくに、市街地や郊外での向上ぶりには目を見張るものがある。

なおクラウンとしては初めて、後輪駆動システム(DRS)が全グレードで標準装備されているが、これもクロスオーバー化にともなうネガティブ要素を払拭するための採用だ。低速時の撮りまわしの良さを担保するとともに、ドライバーの意思にリニアかつ安定して反応する挙動を生み出す。高速域での安定感も、より高めることができるという。

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