16代目クラウンのメタモルフォーゼは、想定の3歩半ぐらい先を行くものだった。SUV系モデルを中心とする伝統的セダンスタイルからの脱却には、改めて「クラウンのブランディングをゼロから始める」という、トヨタの強い意志を感じる。果たしてこのクロスオーバースタイル・・・アリ?ありあり??

世界を席巻する多様性。それはローカライズだけではない

ことほどさように、新型クラウンのメカニズムはまさに「一足飛び」の進化を果たしている。その多くがレクサスブランドのフラッグシップSUVであるRXの最上級モデルと同等、あるいは共通化されていることも、興味深い。本気のグローバル展開を目すクラウンが「レクサスクオリティ」を身に着けることは、ある意味、必然だったとも思える。

ちなみに今後、1年半をかけて順次市場に投入される他の「クラウン」たちのパワートレーンやプラットフォームといった基本構造が、まったく同じものであるかどうかは、今のところ公表されていない。

画像: 圧倒的な若々しさを感じさせる「スポーツ」(左)と、猛々しさと気品との絶妙なバランスがコンサバなイメージを覆す「セダン」。それぞれにプラットフォームやパワートレーンが、異なるものとなるのだろうか。

圧倒的な若々しさを感じさせる「スポーツ」(左)と、猛々しさと気品との絶妙なバランスがコンサバなイメージを覆す「セダン」。それぞれにプラットフォームやパワートレーンが、異なるものとなるのだろうか。

ただ、たとえば赤いボディが鮮烈な印象を振りまいていたSUVとスポーツハッチバックのクロスオーバー的モデル「スポーツ」は、2021年末の新EV戦略発表時に「クロスオーバー EV」として並んでいたものと同じだ。

つまり、このモデルではフルバッテリーEV化を前提に、駆動用バッテリーの搭載スペースなどについて配慮した設計が与えられていると考えていいだろう。同様にステーションワゴンとSUVのクロスオーバーをイメージさせる「エステート」も、フロントグリルの開口部少な目なアレンジなどにBEV感を強く感じた。

興味深かったのは、ある意味コンサバティブな「セダン」だ。実はそのたたずまいからは、「なんだかどこかで見たような」印象を受けた。これはあくまで個人的な想像だが、デザイン的バランスはMIRAIにとても近いように思える。となるとこちらには、FCV仕様が設定される可能性なども勘繰りたくなる。

クラウンが見据えた「フラッグシップのグローバル化」戦略は、単なる形やジャンルのみにはとどまらない。仕向け地ごとの交通環境やインフラ、文化的背景に民族的な好き嫌いの感性までしっかり分析しながら、あらゆる意味での最適化、多様化が必要だと考えていることは確かだ。

つまりは、2種類のハイブリッドシステムで驚いていてはまだまだ、ということなのだろう。なにしろ次世代パワートレーンに関しては「全方位戦略」を謳うトヨタのことだ。今後、クラウンのラインナップが拡大されるにつれてBEVやFCV、あるいはもしかするとディーゼルに至るまで、ありとあらゆる「環境に優しい」と言われるパワートレーンが搭載されることになるのかもしれない。

「TOYOTA CROWN」のリブランドで国際派に

新型クラウンがワールドプレミアされた時、豊田社長は「15代続いた江戸幕府の時代が終わり、16代目からは明治維新が始まる」とスピーチを締めくくった。長きにわたった鎖国状態から開国され、海外への輸出産業が隆盛していった当時の日本の状況は確かに、ほぼほぼ「国内専売」だったクラウンが海外に進出していイメージにシンクロするものがある。

北米でも16代目クラウンが発表された。初代クラウンから4代目にかけて、クラウンは北米市場に輸出されていた。それから50年を経て「Return to the US」してきた新型は、大胆なスタイリングと新しいハイブリッドシステム(「ハイブリッドMAX」というApple Siliconみたいなネーミングだが)に注目が集まっている。メインカットはブラック×エモーショナルレッドの最上級仕様車。「赤」が良く似合う。

そういえば明治維新から第二次世界大戦に至るまで、日本の輸出産業を支えてきたのは生糸、綿糸、綿織物、絹織物といった繊維産業だったという。織物と言えば、まさに江戸時代末期に生まれ明治の時代に織機から身をたてた豊田佐吉翁のことがやはり、思い浮かぶ。

豊田市もエリアに含まれる三河地方は、古くから養蚕が盛んだったとか。かの地の産物には、「赤引糸」など、伝統的な祭祀などでも重用された「ブランドもの」まであったそうだ。

繊維とクルマ、製品としての立ち位置はもちろん全く違う。けれどかの地から再び世界に向けて「トヨタ クラウン」という新たなブランドが発信されようとしている今を「明治維新」にたとえるのは、なんともタイムリーで刺激的だ。なにより、豊田社長の本気モードをひしひしと感じる。

あえて言うなら、4つの個性が与えられた新型クラウンは「トヨタブランドのクラウン」では、もはや一括りにはできないだろう。「TOYOTA CROWN」というもの自体が新たなブランドとして、独自の世界観を構築することになるのかもしれない。

日本人にとっても特別な存在が新たな一歩を踏み出し、やがて世界の市場で認められ、愛されることになるのだとしたら、それはまたひときわ痛快な話ではないだろうか。

■新型クラウン ラインナップ&プライス

●デュアルブーストハイブリッドシステム(2.4LDOHCターボ+eAxle)× E-Four Advanced
 クロスオーバー RS              6,050,000円
 クロスオーバー RS Advanced         6,400,000円
●シリーズパラレルハイブリッドシステム(2.5L DOHC+電気モーター) × E-Four
 クロスオーバー G               4,750,000円
 クロスオーバー G Advanced Leather Package  5,700,000円
 クロスオーバー G Advanced          5,100,000円
 クロスオーバー G Leather Package       5,400,000円
 クロスオーバー X               4,350,000円

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