16代目クラウンの誕生を機に、各世代のカリスマ性を彩ってきた「はじめて」をあらためて紐解く特別連載企画。第7回は、1983年に誕生した第7世代「GS120型」をご紹介しよう。初の4輪独立懸架をはじめ、プログレッシブパワーステアリングや4輪ESCなど、走りの質感を高める工夫にも積極的だ。(Motor Magazine Mook 「TOYOTA CROWN 13th」より)

スーパーホワイトのボディカラーでブームをけん引

1983年8月31日、7代目のGS120型が発表された。セダンと4ドアハードトップの2ボディとなり、上級グレードのロイヤルサルーン以上にはリアサスにセミトレーリンクアームが採用され、クラウンとしては初めての4輪独立懸架となった。そして、今も有名なフレーズ「いつかはクラウン」は、このクルマから使われた。

画像: 横長の大型リアコンビランプが特徴的。Cピラーは透明プラスティック製のカバーで覆われたクリスタルピラーだ。4ドアHT 2000 ロイヤルサルーン。

横長の大型リアコンビランプが特徴的。Cピラーは透明プラスティック製のカバーで覆われたクリスタルピラーだ。4ドアHT 2000 ロイヤルサルーン。

中小企業の社長や役員だけでなく、ヤングエグゼクティブを魅了したのが6代目のMS110型だった。これに続く7代目のエクステリアはクラウンらしい重厚なデザインである。ボンネットとウエストラインを低く抑えたウエッジシェイプの強いダイナミックなフォルムのなかに、張りのある面と柔らかな面を織り交ぜた。ガラス面積も広い。

人気が低迷している2ドアHTはカタログから落とされ、4ドアセダンと4ドアHTでシリーズを構成している。どちらも格子状の格調高いグリルを採用し、ヘッドランプは上品な角型だ。

4ドアHTはクリアボードを用いて、「クリスタルピラー」と呼ばれる、きらびやかなリアクオーターピラーが日を引いた。ソアラ、マークⅡとともにハイソカー・ブームの牽引車となり、スーパーホワイトのボディカラーも好評を博す。

エンジンは11種類の多きを数える。ボトムは2L 直列4気筒の3Y-PU型だ。当然、主役となるのは直列6気筒DOHCで、リーダーエンジンは2.8LのDOHC、5M-GEU型である。先代は170ps/24.0kgmだったが、7代目は175ps/24.5kgmにパワーアップされた。ソアラなどで好評の1G-GEU型2L DOHCストレート6も仲間に加わっている。DOHC4バルブ方式の1-G-GEU型エンジンは160ps/18.5kgmの秀でたスペックだ。

サスペンションにも新技術が盛り込まれている。ロイヤルサルーン系のリアサスペンションはセミトレーリングアームに進化した。また、プログレッシブパワーステアリングや4輪ESCなどの電子デバイスを満載している。84年夏に3Lの6M-GTEU型エンジンが搭載され、ディーゼルターボもセラミックチャンバーを採用した。

85年秋のマイナーチェンジでは1G-GZE型DOHCスーパーチャージャー搭載車もデビューするなど、積極的にバリエーション拡充に努めている。

ご当時インプレダイジェスト──83年式 クラウン 4ドアHT 2000 ロイヤルサルーン

4バルブ・ツインカムで武装したクラウンの最新鋭モデル。

シートに座ると、やや天井からの圧迫が強く、シートは低めのポジションを選ぶ必要がある。これは後席についても同じようなことがいえ、車格に相応しくない。いくら4ドアハードトップを名乗るとしても、もう少しヘッドクリアランスに余裕が欲しい。

画像: デビュー時はソアラから採用された2.8Lの5M-Gと、2Lの1G-G(写真)の2種の直6DOHCがエンジンの中核となった。

デビュー時はソアラから採用された2.8Lの5M-Gと、2Lの1G-G(写真)の2種の直6DOHCがエンジンの中核となった。

さて、搭載される1G-Gとニュークラウンとの組み合わせによる走行フィーリングだが、試乗前のスペックからの予想どおり「回っていれば速い」ものだった。この1G-Gはポートメカニズムが先進的で、非常に良く回るエンジンだが、反面回していないと走らないエンジンでもあるのだ。ようするに、低速トルクが不足気味なのだ。

スポーツエンジンとしては傑作かもしれないが、果たしてクラウン、しかもATモデルでは良好なマッチングだといえるのだろうか。この1G-Gエンジンの最も美味しい回転域といえば5000~6000rpm前後で、この領域であれば5ナンバーとは思えない軽快さをみせてくれる。しかし、クラウンとATとの組み合わせではこの美味しい領域を保つことはとても難しい。

さらにこの仕様で最も問題なのは市街地走行だろう。静止からのスタートでは初期の加速がかなりもたつく感じで、常にアクセルを大きく踏み込まざるをえない。細い低速トルクはこのような走行パターンでは最悪で、オーナーはかなり割り切って乗ることが必要なのではないか。結果として2800よりも悪い市街地燃費が出ているほどだ。

足回りはコーナーを攻め込むような乗り方をも受け入れてくれるようになってきたが、それでもやはりサイズがサイズだし、挙動変化は常に大きいから本当に飛ばしたい人のための車ではないことは確かだ。ステアリングは予想を超えて重く設定されていたが、正確さとフィーリングは極めて良好だ。

4独とDOHCは武器であるが、これに1G-Gを組み合わせるのは若干疑問が残る。本当に速く走りたい人ならば2800を入手したほうが確実のような気がする。(青木 豊)

■トヨタ・クラウン4ドアHT 2000 ロイヤルサルーン(83年式) 主要諸元

●全長×全幅×全高:4690×1690×1410mm●ホイールベース:2720mm●車両重量:1425kg●エンジン:直6DOHC24バルブ●総排気量:1988cc●最高出力:160ps/6400rpm●トランスミッション:4速AT●駆動方式:FR

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