「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、ポルシェ 911だ。

パナメーラに匹敵する乗り心地の良さに驚愕

画像: パーキングブレーキが電動式となったので、インパネからセンターコンソールが一体となったデザインは、パナメーラと同様にカレラGTのデザインにヒントを得たという。

パーキングブレーキが電動式となったので、インパネからセンターコンソールが一体となったデザインは、パナメーラと同様にカレラGTのデザインにヒントを得たという。

そんな新型911の、3.8Lエンジンを積んだハイパフォーマンス版、カレラS(PDK仕様)で走り始めてみる。前述のように軽いボディに、400psと440Nmを発生するパワーユニットを搭載しているのだから、その加速の力強さに不満があろうはずもない。しかもPDKのコントロールは微低速時から滑らかで、わずかなアクセル操作に対してもギクシャクした動きを発するようなことはない。

世の中には「MTの代替」としてこうしたトランスミッションを位置づけるブランドも少なくない。だが、そもそもPDKはティプトロニック(トルコンAT)の代替として考えられているだけに、こうしたシーンでの扱いやすさはパーフェクトなのだ。一方、乗用車として世界初を謳う7速MTも、クロスレシオゆえに飛ばしのギア操作が抵抗なく行えて、街乗りシーンでも煩雑さはない。PDKのコースティングモードやアイドリングストップなども違和感なく使える。

ところで、そんな新型911の走りで驚かされたのは、乗り心地の素晴らしさにもあった。もちろんそれは、単に「柔らかい」というわけではない。しかし、路面の細かな凹凸を拾った際の不快な振動は瞬時に減衰させ、大きな凹凸はサスペンションのしなやかなストロークがいなして行く。もしも目隠しをした上に、さらに耳栓もされてフラット6サウンドまで封印されたとしたら、それはもはや「パナメーラと区別が付かない」と表現してさえ良さそうだ。

静粛性も向上しているので、911のGTとしてのポテンシャルは、ますます高まっている。実際、開発のリーダーも「今度の911は、よりGT的な性格も強めている」とコメントをしてもいる。

一方で、アクティブ スタビライザーやアクティブ エンジンマウントといったオプション装備をチョイスしたテストモデルのコーナリングのポテンシャルは、これもすこぶるつきの高さだった。特に印象に残ったのは、もはや到底RRレイアウトの持ち主とは思えないほどのスタビリティが確保された上でハンドリングの自在度が飛び切り高いこと。しかもロールが見事にチェックされているので、前輪のグリップ限界が予想するよりもずっと上にあるという感覚だった。

画像: 写真の911カレラSは、911カレラより全高は8mm低いが、ほかの外寸は変わらない。

写真の911カレラSは、911カレラより全高は8mm低いが、ほかの外寸は変わらない。

■ポルシェ 911カレラ クーペ<911カレラS クーペ> 主要諸元 ※欧州仕様

●全長×全幅×全高:4491×1808×1303mm<4491×1808×1295>
●ホイールベース:2450mm
●車両重量:1380kg<1395>※PDKは各+20kg
●エンジン:水平対向6 DOHC
●総排気量:3436cc<3800>
●最高出力:257kW(350ps)/7400rpm<294(400)/7400
●最大トルク:390Nm(39.8kgm)/5600rpm<440(44.9)/5600>
●トランスミッション:7速MT or 7速DCT(PDK)
●駆動方式:縦置きRR
●燃料・タンク容量:プレミアム・64L
●NEDC総合燃費:11.1〜12.2km/L<10.5〜11.5>
●タイヤサイズ:前235/40ZR19、後285/35ZR19<245/35ZR20、295/30ZR20>
●当時の車両価格(税込):1117万円〜1192万円<1381万円〜1456万円> ※日本発売時

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