走り出してすぐに感じるのはステアフィールの素晴らしさ
以上のような予備知識を持って、試乗に臨んだ。まず7速スピードモード付のCVT車に乗り込んだ。すぐに感じられるのは、着座位置が低いということだ。そしてシートはがっちりとしておりホールド性がいいし、小径のステアリングホイールはグリップが太めで握った感じもなかなかいい。スポーツカーとして十二分に合格点が与えられるドライビングポジションを実現している。
インパネまわりはどうだろうか。正直に言って、ホンダ車全般のインパネまわりのデザインは少々子供っぽいような気がしているのだが、CR-Zの場合はその子供っぽさというか、未来的な造形がクルマの性格によく合っているようで、違和感はまったくない。
フロントウインドウはAピラーの位置をなるべく後方にするために、高曲率タイプを採用している。そして、Aピラー自体もかなりスリムなので、前方視界は非常にいい。ドライビングポジションは低いのだが、前方に広がる開放感は十分で、スポーツドライビングを楽しむ条件が整っている。一方、後方視界はそのスタイリングから想像がつくように決してよくはない。このあたりは「昔のCR-Xと同じ」で、何やら懐かしい気分になった。
さて、いよいよ走り出してみる。まず感じるのはステアフィールの良さだ。40km/hレベルで一般道を数百m走っただけで、それを感じとることができる。インサイトより30%ほど高出力化したモーターによる電動パワーステアリングなのだが、制御システムも新開発だそうで、軽すぎることなどはなく路面の情報を的確にドライバーへ伝えてくれる。ステアリングギアボックスの取り付け剛性を高めたそうだが、その効果もあるのだろう。
これはなかなか良いぞと思いながら、ちょっとしたコーナーにさしかかる。そしてクリアしながら感じるのは全体的なバランスの良さだ。4輪ががっちりと路面を捉えていることがステアリングホイールから伝わってくる。通常、このクラスのFFは前後重量バランスが7:3に近いが、CR-Zは6:4なのだ。さらに低重心で、しかも車重が1160kgと軽い。コーナリングを気持ちいいと感じさせる要素が揃っているのだ。