まずは売れ筋グレード「ハイウェイスターV」からチェック
新型セレナ e-POWERのグレード構成は全部で4つ。親しみ深いプレーンな印象をもつ「X」と「XV」、売れ筋モデルの「ハイウェイスターV」、そしてe-POWER専用の最上級グレード「LUXION(ルキシオン)」だ。
その中で今回、試乗できたのは、ハイウェイスターVとルキシオンの2台。まずはハイウェイスターVからハンドルを握った。実はこのグレード、現在の受注状況ではe-POWERモデルの中で約8割を占めている。最も注目度の高い1台だけに、その完成度が気になるところだ。
乗り込んですぐにわかるのが、先代モデルから大幅に向上したインテリアの上質感。同社のアリアやサクラといったBEVに通ずるデザインが特徴だ。運転席に乗り込んだ時の圧倒的な開放感は、サイドウインドウが前方に向かって下がっていくセレナの伝統に則ったものだが、新型にもしっかり継承されているのが嬉しい。
さて、セレナ e-POWERを始動する。ハンドル左奥にあるイグニッションを押すと、眼前のディスプレイにはノートやアリアと同様に、バンダイナムコのサウンドクリエイターによって制作されたオープニングアニメーションが流れる。バッテリー残量が充分に残っていたので、ここでエンジンが目覚めることはない。当然のように、室内は静かなままだ。
セレナでは初めて、スイッチ式電制シフトを採用している。まるでゲームをスタートさせるようにDレンジに切り替えてアクセルを軽く踏むと、するすると滑らかに走り出した。コンパクトクラスのノートe-POWERでは少し気になった、走り始めた時に聞こえる車両接近通報装置の音は、セレナでは耳を澄ませないと聞こえないほど静かだ。
走り出してアクセルを少し深めに踏むと、エンジンが目覚めてバッテリーへ発電を始める。先代モデルから排気量が200ccアップした新開発の1.4L e-POWERエンジンは非常にジェントルで、振動や唸り音がしない。このあたりですぐに先代モデルからエンジンの静粛性が大幅に進化したことがわかる。ラジオや音楽をかけて運転していると、エンジンがかかってもその存在に気づくことは難しいだろう。
最大トルク315Nmを発生するe-POWERは、いつでもレスポンスよく反応する
新型セレナ e-POWERの駆動モーターは、最大315Nmのトルクを発生する。電気モーターはいつどこでアクセルを踏んでも、この315Nmのトルクを路面に伝えることができるため、アクセルの踏み込みに対してレスポンスよく反応してくれる。
一方で、これまでのe-POWER車に感じたような鋭い加速力は感じなかった。ただし開発者によれば、それは意図的な制御によるものだという。
新型セレナでは、クルマ酔いのしにくさを開発の主眼のひとつにしていて、体が揺られにくいように加減速をなめらかになるように開発したとのこと。確かにその効果をどの席に座っても感じることができた。揺すられ感はなく、フラットな乗り心地を実現していた。
粛々と走り出してからほどなく、クルマのペースを上げても静粛性の高さは健在だった。必要に応じて発電のためにエンジンが始動するがやはり、エネルギーモニターを確認しないと気づかない。エンジンまわりの効果的な吸音材の配置に加え、フロントウインドウに採用した遮音ガラスが効いているようだ。
試乗会場を出て少し進むと、勾配のきついワインディングロードが現れた。ここで光るのが新型セレナのハンドリングの良さだ。日産のミニバンで初採用のラックピニオン式電動パワーステアリングは、ノートやエクストレイルと比べてはっきりと軽い操舵力にも関わらず、しっかりした手応えが感じられる。そのフィーリングは、とても質感が高い。
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ワインディングでも、乗り心地はクリーンですっきりとした印象を保つ。ハイブリッド車によくある車体の重さを良い意味で感じさせず、段差やマンホールを乗り越えた時も嫌なショックは感じない。ただし、3名乗車だったため相対的に後ろが軽かったこともあり、時折リアから伝わる微振動が気になったことはお伝えしたい。
次に席替えをして、ハイウェイスターVの2列目シートに座る。セレナ e-POWERに待望の「スマートマルチセンターシート」が装備された。実は先代のe-POWERモデルには装着できなかったため、待っていた人も多いのではないだろうか。これによって、新型セレナe-POWERはルキシオンを除き8人乗りが設定できるようになった。
広々とした室内空間はセレナの特筆ポイントのひとつ。Mクラスミニバンでトップの後席空間は、一度ぜひ体験してほしいところだ。バッテリーがあるとは思えないほど、シートアレンジが自由自在なのもセレナe-POWERの魅力のひとつだ。