一体感ある走りを追求したBEV専用プラットフォーム
RZはレクサスブランドにおいての、第二弾となるBEVだ。第一弾として登場したのはCセグメントSUV、UXのバリエーションという位置づけになる300eだが、こちらもRZの国内発表に合わせるようにアップデートが施されている。
搭載バッテリーを刷新しその容量をRZより多い72.8kWhに増強。航続距離を当初から約4割増のWLTCモード512kmとするなど、実用においての不満を大きく解消する仕様となっている。価格は当初から50万円上がったが、性能向上分の対価としては納得の範疇だろう。
と、ここで不思議に思うのは、なぜ専用アーキテクチャーで肝煎りのRZに被せるようにUXの改良が発表されたのかということだ。恐らく年次ごとに弛まぬ改良を続けていくというレクサスの基本方針に加えて、35年には販売全量のBEV化を目標に掲げている以上、常にそこへの前向きな姿勢を見せておきたいという思いもあったのではないかと察する。
話は戻って今回のRZだ。既報のとおり、専用アーキテクチャーを持つ初のBEVとなる、そのベース車となっているのはトヨタbZ4X/スバル ソルテラだ。
RZはそれらに比べると寸法的には全長が115㎜、 全幅が35㎜ 大きく、全高は15㎜低 い。ホイールベースは同じだが、トレッドは前後ともに10㎜ず つ広くなっている。タイヤサイズはリアが20㎜幅 広になるなど細かく仕様が異なっており、単なるバッジエンジニアリングとは一線を画する。
開発プロセスを聞くとバネ、ダンパー、ブッシュなどのセットアップはまったく異なっており、後述するステアバイワイア仕様についてはレクサス側のエンジニアがゼロベースで開発、それに合わせてレクサスがDIRECT4と呼ぶ駆動コントロールも独自の制御となっている。
車台はe-TNGAをベースにスポットの短ピッチ化や、ウインドウ、ドアまわりなどの開口部のレーザースクリューウェルディングやレーザーピーニングなどの特殊接合、リアゲート開口部の二重環状構造や高剛性発泡剤の注入、ホイールハウスや床板まわりを中心とした構造用接着剤の使用など、徹底した剛性向上策がほどこされている。
大幅な出力アップにも関わらず、航続距離もしっかり延長
この車台の床下に積むバッテリーの容量は71.4kWh。これはbZ4X/ソルテラと同じだ。ただしRZはインバーターに炭化ケイ素=SiC素子を用いたパワー半導体を用いて省エネ化を進めている。Si素子に対しては特定領域でパワーロスを半減以下にできるという。それは、電動車において10%程度の効率向上が期待できるという。
その甲斐あってか、RZの航続距離はWLTCモードで494kmと発表されている。これはbZ4X/ソルテラの487kmよりもわずかに長い。なんだその程度かと早計しそうになるが、RZは前軸部にbZ4X/ソルテラでは前輪駆動モデルのみに用いられる高出力モーターを採用しており、システム総合出力は313psと、bZ4X/ソルテラの全輪駆動モデルに対して95psの高出力化が図られている。
と、それによる電費の減損分をSiCインバーターがカバーしているという見方もできるだろう。ちなみにRZの0→100km/hは5.3秒、最高速は160km/hと発表されている。
エクステリアで特徴的なのは「スピンドルボディ」と称される新しいデザインランゲージだ。電動化時代を見据えてスピンドルシェイプをグリルではなくボディと一体化された形で見せるというこの意匠、RZの後に登場したRXや、直近で発表されたLMにもそのイメージが看て取れる。
電動機の発する音が小さいこともあって、吸音材などの物理面のみならず空力面からの消音に力が注がれているのもRZの特徴で、ボンネットは開口部全周をシーリングするほか、床下のフラット化や側面の整流、前後ラミネートガラスの採用などさまざまな手段が講じられている。
副産物として理想的なエアフローが実現したことで、リアスポイラーはスプリットタイプとなり、リアウインドウはワイパーレスになっているのも外観上のアイキャッチとなっている。
後席の居住性は床面がやや高く前席下部への足入れ性が悪いなどのウィークポイントもあるが、空間前後長を活かして足元の空間はており、他のBEVと比べても停止時の静粛性はすこぶる高い。このあたりは長年HEVを手掛けるノウハウの広さや深さを感じさせる。そして走り出しからモーターの稼働音やインバータのノイズなどもしっかり封じられている。