GT-Rとしては驚くほどの快適性が実現された走行感覚
その最新モデル、プレミアムエディションTスペックで走り始めると「なるほど」と実感させられたのはまず、そうした空力も功を奏しているであろう快適な乗り味に代表される、これまでのGT-Rでは得られなかった穏やかで平和な印象。
そう感じられる大きな要素は何か? と考えてみると、それはまずDCTのマナーの良さにあることに気が付いた。

GT-Rプレミアムエディション Tスペックは、フロント20インチホイールのリム幅が10J/インセット値が41mm
とされる(標準GT-Rのフロント20インチホイールはリム幅9.5J/インセット値45mm)。ちなみにタイヤサイズは全モデル共通。フロントフェンダーはTスペック専用の拡幅タイプとなり、専用拡幅フェンダープロテクターも装備。
思い返せばデビュー当初のGT-Rで強く印象に残ったのは、何とも自己主張の強いDCTの存在感だった。ギアやアクチュエーターの作動音は、まるで試作品ではないかと思えるほどに盛大で、トルクの伝達感は濃厚である一方でシフトショックも“シームレス”という言葉の反対を行くように明白だった。
それが最新GT-Rに乗ると、まさに「今は昔」。ショックアブソーバの設定モードでコンフォートを選択すると、ボディ上屋の動きがやや大きい印象こそあるものの、フラット感が高いクルージング時のテイストにも前述のような「新しいGT-Rの世界」が感じられたのである

ディンプル付きの本革巻シフトノブは、プレミアムエディションTスペック専用色。センターコンソールのカーボン製フィニッシャーは、Tスペックの専用エンブレム付きとなる。
洗練された走行性能の実現という価値観を実現した911カレラT
ところが、そんなGT-Rから911ファミリーに加えられた最新バージョンであるカレラTへと乗り換えると、最初に思わず口をついて出てしまったのが「なんて洗練されたクルマなんだろう」というひと言であった。

911カレラTのエクステリアは、各部に採用されるダークグレイ色のディテールがアクセントとなる。フロントガラスは、最上部がグレーに着色されているのも特徴のひとつ。ドア下部に入るロゴとリアのロゴ、リアリッドグリルのトリムストリップなど、ボディカラーとコントラストを形成する部分にカレラTならではの特色が備えられている。
GT-Rに対して、カレラTがそう感じさせる主たる要因は何なのかとこちらも冷静に考えてみると、それはクリアで「ノイズ」が徹底的に排除された操舵フィールに代表されることに気が付いた。
低速域からスッキリと軽いことが印象に残る電動式パワーステアリングシステムを備える911カレラTの操舵感については、テストドライブを行った個体に微低速走行時の操舵力を軽減させる「パワーステアリングプラス」がオプション装備されていたことも影響していそう。
一方、わずかなわだち路面でも敏感にワンダリング現象を示したGT-Rに対し、911ではそうした「雑音」が一切認められなかったのは大きな相違点。GT-Rが、油圧式のパワーステアリングシステムを使い続けていることも、もちろん大きく影響を及ぼしているに違いない。
このあたりが、一般道や高速道路上でのリラックスした走りのシーンに対しては、想像以上の印象の差をもたらしていたのである。<後編に続く>(文:河村康彦/写真:永元秀和)

911カレラTのエンジンは、911カレラと同じ3L水平対向6気筒ツインターボで、最高出力283kW(385ps)/6500rpm、最大トルク450Nm(45.9kgm)/1950-5000rpmという仕様。クラッチペダルの踏力も軽く、7速MTを操作することを楽しめる。また「Auto Blip(オートブリップ)」機能をオンにしておくと、シフトチェンジ時にエンジン回転数を自動的に合わせてくれるので、実に滑らかな変速操作を体感できる。