ほどよく重厚な「直6感」が感じられる・・・ような気がする
今回の試乗会では、FCEVのZ(830万円)とマルチステージハイブリッドのZ(730万円)を乗り比べることができました。どちらも標準装着のタイヤは235/55R19ですが、後者は「ブラックパッケージ」を装備しているため245/45ZR20を履いていました。
横浜のみなとみらいを中心にした試乗時間は、それぞれ実質30分ほど。短い時間ですが、一般道と首都高速道路で乗り心地とドライバビリティ、そして自慢のエンターテインメントの仕上がりを試してみることにしました。
ここからはあくまでドライバー目線で語ります。
MIRAIと同じく水素を使う燃料電池で発電、電気モーターで駆動するFCEVは、静かでスムーズ。このあたりはEVとして普遍的な魅力を備えています。1回あたり約3分の水素充填で約820kmのロングディスタンスも実現しました。
加えて新型クラウンセダンは、きわめて紳士的なパワーフィールが印象的。わざとラフにアクセルペダルを踏み込んでも、トルクの出方はあくまで滑らかかつフラットなものです。それはけっして、もどかしさを覚えるようなおとなしいフィーリングではありません。
最高出力は182ps、最大トルクは300Nmと実はしっかり力に余裕があるのに、無駄なく効率的に、ほどよい力強さを生み出している感じです。実際、スピードの乗りも非常にリニアでコントロールしやすいものでした。
それはさながら、長きに渡ってクラウン系列に展開されていた直列6気筒エンジンを彷彿とさせるフィーリング。それも、ターボが装着される前の大排気量NA版。その「ゆとり」を現代風に洗練させたら、もしかするとこんな感じ?
そういえば・・・パワーフィールだけでなく、ハンドリングにもまた、ほどよく重厚な「直6感」が感じられるような気が。速度域高めのカーブでは、わずかにフロントの重さを感じさせながらも、基本的にはニュートラルなコーナリング姿勢を保ちます。
ちょっとだけ積極的にアクセルやハンドルの操作を加えると、挙動変化がやはりとてもスムーズかつ自然で気持ちいい!特性的にはサーキットをがんがん攻めるような走りには向いていないかもしれませんが、緊張感を感じさせることなく意のままに操ることができる「なんとも贅沢な味わい」なのでした。