ダイレクト感が高められたマルチステージハイブリッド
一方、おそらくは販売の主力となる2.5Lマルチステージハイブリッドシステムを搭載したモデルは、やはりまた異なる味わいです。エンジンの出力特性改良やCVTではなく4段変速機構を備えることで、発進時から内燃機関らしい脈動感を感じることができました。
さすがに「直6」なシルキータッチでこそないものの、4発らしいパンチ感と伝達効率が高められた電気モーターによるアシストが、ほどよくスムーズかつスポーティなパフォーマンスを発揮しています。フィーリング的にHEVは、よりドライバーズセダン寄りのキャラクターが与えられているようです。
エンジンスペックは185ps/225Nm、電気モーターは182ps/300Nmを発揮しています。とはいえフィーリングはFCEVと同様に紳士的で、安心感に満ちています。本質的に新型クラウンセダンは、四輪駆動の特性を最大限生かしているクラウンクロスオーバーほどには、アグレッシブな走りを狙っていないのかもしれません。
ドライブモードを「スポーツ」に変えればまた印象が変わってくるのかと思いますが、こうしたしっとりとした乗り味は、セダンらしい上質感を感じさせてくれる重要なポイントと言えるでしょう。
もうひとつ、タンク容量が82Lもあるのは、もともと水素タンクを3本も積めるプラットフォームを使っているおかげかも。WLTCモード燃費は18.0km/Lなので、単純計算では航続距離が1400kmを越えちゃってますね。もちろんレギュラーなので、お財布にも優しいし。
あくまでさりげないPDAのサポート。違和感はほぼなし
実はこうしたキャラクター設定を完成させているのが、さまざまなシーンで安全なドライビングをアシストしてくれる、ADASの数々です。
とくに注目して欲しいのが、クラウンセダン全モデルに標準採用されている「プロアクティブドライビングアシスト:PDA」。これは、一般道や高速道路で運転状況と走行状況に応じたステアリング、ブレーキ操作を支援するシステムですが、デフォルト状態から機能しているところがACCとは異なっています。
中でも今回の試乗で恩恵をはっきり体感できたのは、前走車との距離に合わせて減速力を調整してくれる機能でした。けっして唐突にブレーキがかかるようなものでは、もちろんありません。あくまでアシスト。ドライバーがアクセルOFFにした段階から、ちょうど良い感覚でほどよい間隔を保つように、確実に減速を支援してくれます。
先述したジェントルなハンドリングも、PDAによる車線内走行時常時操舵支援が、縁の下の力持ち的な役割を果たしてくれているようです。一般道の交差点でも減速などのアシストは入っているようですが、こちらはまったく体感することができませんでした。けっして出しゃばることのない品の良いサポートぶりには、はっきり言って脱帽です。