市販車プラスアルファのGS450hで24時間に挑む
参戦決定を告げる公式リリースに掲げられた旗印は「今後の市販車両への技術的なフィードバックを前提に、24時間レースという過酷なモータースポーツの場での挑戦を通じて、ハイブリッドシステムの更なる小型軽量化や高効率化等を目指す、開発の一般と位置付けて行うものである」(2006年7月4日付リリースより)
あわせてこの時、トヨタははっきりと「ハイブリッドスポーツシステムのモータースポーツにおける可能性についても、調査を行う予定」であることを明言しています。このころFIA会長だったマックス・モズレーが「将来的には、F1のハイブリッド化もやぶさかではない」とコメントするなど、ハイブリッドは確かにレース界においても注目株となっていました。
折しも2006年と言えば少し先んじた6月、過酷なことでは十勝を凌ぐフランス ル・マンでの24時間レースで、LMP1マシン「アウディR10 TDI」が史上初のディーゼルエンジン総合優勝を果たした年です。
その快走によってディーゼルの優秀性(主に省燃費と速さのハイレベルなバランスだったようです)が印象付けられた以上、ハイブリッドのイメージ向上にレースを活用するプランはある意味、トヨタにとっても必然だったかもしれません。
もっとも、十勝サーキットの現場で取材している側には「ハイブリッドで走り切ることができるのか?」という不安も半ばありました。概ね、電気モーターの耐久性や、回生によるバッテリーの持ちに関して、懐疑的だったことは確かです。
レースマシンのベースは、レクサスGS450h。エアロで「武装」してはいるものの、基本メカは市販車をレース規定にフィットさせたレベルだったと記憶しています。当時はST-Qクラスはなく、特認車両として最大の排気量が許されるST1クラスから参戦しました。
トヨタ陣営(正確には、準ワークス系のSARDを経由)の目論見としては、省燃費性を活かしたロングスティントでの健闘を期待していたようですが、いかんせんボディの重さが裏目に。エンジンと燃料タンクに加え、モーターとバッテリーを搭載していたGS450hの車両重量は、1.5トンに達していたそうです。
おかげで実戦でのタイヤ、ブレーキ、サスペンションへの負荷は想定を超え、バッテリーへのエネルギー回生も難しく、かなり頻繁なピットインが必要になりました。それでも全完走車29台中17位、クラス4位の戦績は、そうとうな健闘と言えるでしょう。