2トンを超える車重を感じさせないワクワクさせる走り
BMWに乗るといつも100mも走らないうちに「どうしてBMWのクルマってどれもこんなにワクワクさせる走りなんだろう」と感心してしまう。それは1シリーズでも3シリーズでも5シリーズでも7シリーズでも感じることだ。さらに4気筒エンジンでも6気筒でも8気筒でもそう。つまり、どのモデルに乗ってもBMWは、つまらないと思うことがない。今回、BMWの新しいパワーユニット“ツインパワーターボ”エンジンを与えられたX5に試乗したときも、また同様だった。
試乗モデルは、X5 xDrive35i。この35iが積む3L直噴ターボは、135i、335i、535iにも積まれ、BMWエンジンのなかで直6のトップエンドエンジンである。が、しかしX5は2トンを超えるSAVだ。いくらなんでもちょっとパワー不足なんじゃないかな……なんて勝手に思いこんでいた私が浅はかでした。
スタートボタンを押して走りだし、駐車場を出たか出ないかのうちにまた感心してしまい、「こりゃ、BMWがX5に積んだのも至極当然だな」なんてひとりごとまでつぶやいてしまった。
改良されたX5は、エクステリアもインテリアも大きく変わったとは言い難い。新旧の2台を並べて見比べてもすぐに違いを見つけることは難しいだろう。じっくりと見てもフォグランプの位置やバンパーのデザイン変更とヘッドライトのスモールライトリングとリアコンビネーションライトにLEDが採用されたことなどで判別できるくらいだ。
そうした意味では、従来モデルのオーナーも新型との差(違い)をそれほど気にすることなく乗ることができるが、一度、ツインパワーターボエンジンを積んだX5に乗ったら、その違いには驚くはず。それほど、N54B30A型エンジンは、感動すら覚えるパフォーマンスをみせてくれる。
お世辞にもコンパクトとは表現できないX5のボディは、動き出すまではその大きさを意識してしまう。しかしそんな思いも、いったん走りだすとたちまち消えてしまう。大きなボディをキビキビと走らせ、軽快という言葉さえ使いたくなるようなフットワークを見せてくれるからなのだ。そこにはとてもじゃないが退屈だなんてひとときも感じることはない。そう、“退屈しない走り”こそBMWの真骨頂だと思う。それが新しいX5にも全身で表現されているのだ。
アクセルペダルを踏んだ量だけ瞬時にドライバーに伝わる動きは、低回転であってもダイレクトなもの。それは高回転まで回しても途切れることなく、スムーズといった表現が相応しい。ドライバーが意図した動きをクルマがするダイレクトな操作性はまさに意のままに操るといった感覚だ。
効率的なダイナミクスは好燃費ももたらす
今回の試乗は、一般道、高速道路、ワインディングなどさまざまなシチュエーションで約500km走行することができた。燃費もチェックしたが、渋滞のない一般道では7〜8km/L台をキープでき、ワインディングでも7km/Lを下回るような場面には遭遇しなかった。また高速道路では9km/Lという、とても2トンオーバーのSAVとは思えない好結果を残してくれた。
こうした結果を生み出したのは、BMWがマイクロハイブリットと呼ぶブレーキエネルギー回生システムや直噴ダイレクトインジェクションとツインスクロールターボエンジンの組み合わせと8速ATの貢献も大きい。
BMWは、BMW Effi cient Dynamics、つまり“駆けぬける歓びにプラスした効率的なダイナミクス”という理念はこのX5 xDrive35iでも具現化されていると言っていいだろう。(文:Motor Magazine編集部 千葉知充/写真:堀越 剛)
BMW X5 xDrive35i 主要諸元
●全長×全幅×全高:4860×1935×1775mm
●ホイールベース:2935mm
●車両重量:2170kg
●エンジン:直6DOHCターボ
●排気量:2979cc
●最高出力:225kW(306ps)/5800rpm
●最大トルク:400Nm(40.8kgm)/1200-5000rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●車両価格:798万円(2010年当時)