チームに救われたレース本番
そうして迎えたレース本番。まずは、練習会よりも大幅に多い出場カート数に圧倒され、前、後ろ、横、フラッグなど全方向に注意を配り、接触を避けながら走るところから始まります。
初心者にとっての1周目というのは速く走るどころではないので、周りの様子を見つつ安全に走行し、2周目からは少しペースアップして少しずつ練習走行時の感覚を呼び起こしていきます。この2周目では、練習走行時のベストラップとほぼ同じタイムが出ており、ここからどこまでタイムを縮められるかワクワクしながら3周目に進みました。
が、第3コーナーに差し掛かった際、ほかのチームと接触寸前のハプニングがあり、とっさに回避行動をとったことでカートがスピンし、第4コーナー手前の外側の端付近でコース進路と反対の向きに停車。
この時点ではマシンは無傷だったため、後続の他チームたちがいない安全なタイミングを見計らってコース外に移動して車両状態を確認し、レースに復帰しようと考えていました。ただ、その5秒後くらいに来た車列が3〜4台の横一列でコーナーに進入してきていたため、一番外側を走行していた車両と、停車していた自車が衝突するクラッシュアクシデントに発展してしまいます。
この時の衝撃で、フロントカウル右側は大きく破損しベコベコに。また、コース外へマシンを移動させた際に、右フロントタイヤ付近のタイヤとフレームの接合部分も折れ曲がっていることが確認できたため、レース続行は不可能と判断してレッカーサービスを要請。この段階では痛みを感じていなかったので救急車は利用せずレッカー車に同乗する形でサーキットコースを後にしました。
ただ、マシンとともにピットに戻った際に、今度はアドレナリンが切れたのか手首の震えと痛みを感じるようになり、次いで首、腰の痛みも少しずつ出てきたため、メディック(サーキットにある簡易的な病院)を受診。骨折ではなさそうなものの、しばらく安静にする必要があることと、サーキット周辺に病院がないため、帰宅後にちゃんとした病院で検査を受けてくださいという診断を受けます。
しかし、マシンが壊れてしまった罪悪感、もう走行できないかもしれないという悲壮感など、さまざまな感情が交錯しており、どうしても自分の怪我よりもマシンの状態やチームに迷惑をかけたことの方が気になってしまい、居ても立ってもいられずに気づいたらピットへ向かっていました。
ピットでは、チームの方が寄り添ってくれて落ち着くまで励ましていただき、またマシンの方もメカニックの皆様により、みるみるうちに復旧作業が進み、あっという間に応急処置が完了。なんとかレースに復帰できそうだという嬉しいニュースに少し安心し、優しい気遣いとチームワークの素晴らしさに感謝・感動しました。
と、このタイムングで今度は同じチームの96号車がクラッシュしたという情報が入ってきます。こちらはドライバーが救急車で運ばれるほどの大惨事だったようで、それまで興奮していた思考が一気に沈静化。レースにアクシデントはつきものだというチームメンバーの励ましが現実的に感じられるようになったことにより、正気を取り戻すことになります。(96号車は1時間ほどでレースに復帰し、無事完走)
そこからは、できる範囲でチームメンバーのサポートに回ってチームの完走を祈り続け、最終的には無事完走を達成しました。