ツーリング性能をさらに引き上げる最新のTDI
車両の脇に立つと最近のモデルでは珍しいやや派手な「ガラガラ音」に、その心臓部がディーゼルだと即座に判別が付く。
そうしたエンジンノイズはひとたび乗り込んでドアを閉めれば耳障りではない一方、走り始めるとロードノイズにパターンノイズと今度はタイヤに起因すると思われる音が少々賑やか。
「なるほど実用本位のベーシックモデルだな」と実感させられるのはまずはそうした瞬間で、率直なところやはりプレミアム感を売り物とするブランドの作品とは一線を画する印象は強い。
とは言え、そうした部分にことさらの上質さを求める人は多くはないであろう点はかねて「質実剛健」を特徴としてきたゴルフというモデルの役得というべきか。
特段のシャープさなどは演じられない一方で、正確無比で信頼に足るハンドリングの感覚や前述のようにハッチバックモデル以上と思えるクルージング時の安定感の実現。そして、そんな優れたツーリング性能をさらに引き立ててくれる最新のディーゼルユニットならではの粘り強く太いトルク特性なども、このモデルの走りの個性としてポジティブに受け取れる。
「3」だからこそ気になってくる「スポーツ」の持つ意味
一方、やはりブランドの中核を担うモデルをベースに誕生しながら長い時間を生き抜いているのが、BMWの『3シリーズ ツーリング』。
セダンがベースでありながら初代の時点でカブリオレが設定されていたことからも、3シリーズが実用性のみならずプラスαのプレミアム性も意識したモデルであったことは明らか。「ツーリング」と称するステーションワゴンの登場は2代目で、以降の各モデルに設定が行われている。
今回テストドライブを行ったのは、日本向けモデル中で唯一ディーゼルエンジンを搭載する『320dxツーリングMスポーツ』。
ネーミングルールに詳しい人ならば、この名称からそれが4WDシャシの持ち主でかつ、強化された「Mスポーツサスペンション」や動力性能重視の変速プログラミングが設定された「スポーツAT」を採用する仕様であることが読み取れるだろう。
搭載するエンジンは、プライマリー側に可変ジオメトリー機構を採用するシーケンシャルツインターボ方式を採用し最高出力は190ps とディーゼルらしからぬ高出力を発生。そこに、スムーズな変速とタイトなトルクの伝達感を両立させた出来の良い8速ステップATを組み合わせて優れた加速感を味わわせてくれるなど、やはり動力性能面でもスポーティさを前面に押し出したキャラクターが特徴的。
ひと回り大きなボディのサイズや4WDシャシということもあって受け持つ重量は前出ゴルフより240kg も重いものの、アクセルペダルをひと踏みした瞬間にそんな事実は忘却の彼方へ。同じ2L直4ディーゼルであっても、ゴルフの心臓部とのキャラクターの違いは明白だ。