アメリカを代表するスーパースポーツ「コルベット」にもついに電動化モデルが登場した。その名も「E-Ray(イー・レイ)」。フロントにモーター、リアにOHVエンジンを搭載するコルベット初の4WDモデルの実力を確かめた。(文:山崎元裕/写真:平野 陽/MotorMagazine2024年11月号より)

70年に及ぶ進化の歴史に、新たな転機が訪れた

GMのシボレー・ディビジョンが、現行型で第8世代となるコルベット(C8)のラインナップにハイブリッドモデルの「E-Ray」を追加設定した。

画像: 2020年にデビューした現行コルベット(C8型)。E-Rayはワイドボディを採用し全幅は2025mmに達する。

2020年にデビューした現行コルベット(C8型)。E-Rayはワイドボディを採用し全幅は2025mmに達する。

そのアンベールが行われたのは2023年1月17日、初代コルベット(C1)の生誕70周年を祝するイベント内でのこと。スチール製フレームにFRP製の軽量なオープントップボディを組み合わせ、フロントに3.9Lの「ブルーフレーム」直6OHVエンジンを搭載して始まったコルベットの70年にも及ぶ進化は、このE-Rayによってさらに大きな転機を迎えたと言っても、間違いではないだろう。

E-Rayとは、エレクトリックを意味する「E」と、アメリカ本国においてはコルベットに与えられるサブネームの「スティングレイ」を組み合わせた造語だ。

C8においてエンジンの搭載位置を、それまでのフロントからミッドシップへと変更したシボレー。それにハイブリッド仕様が追加設定されるという話は、C8のデビュー時からコルベットファンの間では少なからず話題になっていたことだったが、実際にそれが現実のものとなった感動はやはり大きい。

意外にもシンプルな構造をもつE-Rayのシステム

まずはこのE-Rayのパワートレーンの構成を簡単に解説しておくことにしよう。ミッドシップスポーツのハイブリッドモデルといえば、我々日本人にとってはやはりそのパイオニアともいえるホンダNSXの存在が気になるところだが、E-Rayに採用されたメカニズムは実のところ、このNSXほどに複雑なものではない。

画像: リアミッドに搭載される6.2L V8OHVエンジンはキャビン内からもガラスウインドウ越しに確認できる。

リアミッドに搭載される6.2L V8OHVエンジンはキャビン内からもガラスウインドウ越しに確認できる。

パワートレーンに新たに加わったのは、センタートンネル内にレイアウトされる1.9kWhの容量を持つ、リチウムイオンバッテリーから電力の供給を受け、前輪を駆動する1基のエレクトリックモーターのみで、最高出力と最大トルクは162ps、165Nm。一方ミッドにはコルベットファンにはお馴染みのLT2型、すなわち6.2L V8 V8 OHVエンジンが、8速DCTと組み合わされて搭載され、こちらは後輪に駆動力を送る。最高出力と最大トルクは502ps、637Nm。結果システム全体では最高出力には664psという驚異的な数字が掲げられた。

フロントをエレクトリックモーターで、リアをV8エンジンで駆動し、常時路面状況や車速、ステアリングの舵角などを計測し、前後輪の駆動力配分を瞬時に最適化することで、これもコルベット史上初となる4WD化を実現してみせたシボレー。

シボレーはそれを「eAWD」システムと称するが、フロントに左右2個のエレクトリックモーターを配し、その回転数差によっていわゆるトルクベクタリングを行うNSXと比較すると、E-Rayの走りはいかなる印象を抱くというのか。その疑問、そしてコルベット初のハイブリットであり4WDモデルであるE-Rayの走りに期待しながら、さっそくそのハンドルを握った。

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