2010年12月のメガーヌ ルノースポール(R.S.)に続いて、2011年5月、ようやく3代目ルノー メガーヌのベーシックな5ドアハッチバックモデルの販売が日本で開始された。3代目メガーヌの本国デビューは2008年秋のことだから、2年以上も待たされたことになる。今回は待望の「ふつうのメガーヌ」の中でも、スポーティな仕様となる「GTライン」の試乗の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2011年9月号より)

日産との共同開発の2Lエンジンとジヤトコ製CVTの組み合わせ

「一体いつまで待たせるのか?」 2009年に従来型メガーヌの導入が終了して以来、すでに2008年秋のパリサロンで世界に披露済みだった新型メガーヌが、なかなか日本に上陸しないことにイライラが募っていた人は少なくないだろう。それも、決して「導入しない」というわけではなく「準備中」というアナウンスが繰り返し流されて来ただけに、そんな想いはひとしおだったという人も多いはずだ。

そんな沈黙の時を破って、ようやく昨年末に上陸なった新型は、しかしなんと本来メインとなるべきハッチバックモデルとは異なるクーペボディを採用し、最高出力250psを発するターボ付きの強心臓に6速MTを組み合わせるという、シリーズ中で最も尖ったホッテストバージョンの「ルノースポール」に限られた。そして、そのモデルの導入タイミングでも、まだ耳に届いていたのが、「日本向けのふつうのメガーヌは鋭意開発中」という相変わらずのフレーズ。しかし、長かったリードタイムにも、ついに終止符が打たれる時がやって来た。

この5月からようやく日本でのデリバリーが開始された「ふつうのメガーヌ」は、前出のルノースポールよりも全幅が40mm狭い一方、全高は30mmほど高い5ドアハッチバックのボディに、「アライアンスを組む日産との共同開発」が報じられる2Lエンジンと、日本のジヤトコ製CVTを組み合わせたパワーパックを搭載する。そう、2ペダル式のトランスミッションが必須という日本市場を念頭に置いたこのパワーパックの開発に特別な時間を要したというのが、日本でのリリースがここまで遅れたことに対するルノーのコメントなのだ。

実はフランスといえば、ヨーロッパの中でも乗用車のディーゼル比率がとくに高く、かつこのクラスのモデルはまだまだMTで乗られるのが一般的という市場。そうした中で、既存のガソリンエンジンと既存のATユニットを組み合わせたフランス車の中には、何とも不自然なシフトプログラムを強要されたりした例もかつては存在した。今回は「そうならないよう〝念入り〟にやってくれたのならば、多少の時間を要したのも仕方がないか……」と思いつつ、モーターショーの舞台で目にして以来の再会となった「ふつうのメガーヌ」でのテストドライブは、まずはその動力性能面にフォーカスをしてスタートした。

画像: 「GTライン」のサスペンションはルノースポールがチューニングを施した。プレミアムラインよりもバネレート、ダンパー減衰力が高められ、全高は12mm低い。

「GTライン」のサスペンションはルノースポールがチューニングを施した。プレミアムラインよりもバネレート、ダンパー減衰力が高められ、全高は12mm低い。

欧州流儀で好感が持てるCVTのフィーリング

1.3トン強の車両重量に140psエンジン、そんなスペックを知ってしまえば、加速の能力にさほどの期待を抱く人はあまりいないかも知れない。しかし、結論を言えば「加速は必要にして十分」というのが、テストドライブの末に自らのメモ帳に記したコメントだ。

ここで注目すべきはCVTの変速プログラムで、それは渋滞気味の市街路からワインディング路、そして高速道路でのクルージングに至るまで、「日本の環境下でもまったく違和感がない」と断言できるものだ。それゆえ「輸入車に乗っている感覚が薄い」という意見にも一理はあるかも知れないが、しかしそれは同時に日本車からの乗り換え組に対して、それだけ敷居が低いことを示してもいるわけだ。

もっとも同じCVT車の中でも、発進時の「食いつき感」がなかなかタイトで、その先の「ゴムバンドフィール」もさほど気にならないといったあたりは、欧州流儀のチューニングがイメージできるところだ。ただし、マニュアルモード選択時にもエンジン回転数と車速は必ずしも直線的にシンクロせずダイレクト感に少々乏しいのは、完全なる「MTフィール」を期待するドライバーからは、まだ注文が残る部分かも知れない。

今回テストした「GTライン」は、2グレードが用意される日本の「ふつうのメガーヌ」の中ではスポーティな仕様という位置づけだ。ルノーのスポーツモデルの開発と生産を担当するルノースポールテクノロジーズ社が手掛けた全高が12mmダウンの専用チューニングサスペンションや17インチのタイヤ、アナログ表示のスピードメーターやスポーツシートなどが、こちらの専用アイテムとなる。

さて、従来型に対して6%近くギアレシオが高められたという新型のステアリングフィールは、単にレスポンスが高まったというだけでなく、操作に対する正確性やその自然な感触が大きな美点だ。とくにこのGTラインでは新型メガーヌが備える、そもそものそうした特徴にスプリングレートやダンパー減衰力をきめ細かく設定したというサスペンションの専用チューンが、より磨きを掛けた印象だ。路面とのコンタクト感のさらなる濃厚さなどから、そうした印象を受けた。

一方で、路面の凹凸を拾った際の揺すられ感などは、それがよりマイルドなもうひとひとつのグレードである「プレミアムライン」に軍配が上がる印象もある。このあたりは、どちらが良いか悪いかというよりも好みの問題になるのだろう。

いわゆるCセグメントと称されるこのカテゴリーは、その下に位置するBセグメントと共に様々な強豪がひしめく超激戦区。そんな中で、満を持して登場となったメガーヌがどのような戦いをして行くのか注目したい。(文:河村康彦)

画像: ルノー、日産が共同開発した2L DOHCエンジン。コンロッド、ピストン、バルブの軽量化、アルミブロックの採用などで、重量は1.6Lエンジン並みに抑えられているという。

ルノー、日産が共同開発した2L DOHCエンジン。コンロッド、ピストン、バルブの軽量化、アルミブロックの採用などで、重量は1.6Lエンジン並みに抑えられているという。

画像: インパネまわり、ドアトリムをはじめとする内装色はダークカーボンとしてスポーティムードを高めている。メーターは左にホワイトパネルのタコメーター中央にアナログのスピートメーターが配される「GTライン」専用タイプ。

インパネまわり、ドアトリムをはじめとする内装色はダークカーボンとしてスポーティムードを高めている。メーターは左にホワイトパネルのタコメーター中央にアナログのスピートメーターが配される「GTライン」専用タイプ。

ルノー メガーヌ GTライン 主要諸元

●全長×全幅×全高:4325×1810×1460mm 
●ホイールベース:2640mm 
●車両重量:1340kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1997cc
●最高出力:103kW(140ps)/6000rpm
●最大トルク:195Nm(19.9kgm)/3750rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:FF
●車両価格:275万円(2011年当時)

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