伝説として始まり、革新へと至ったスーパーカーたち。1970年代の懐かしいモデルから現代のハイパースポーツまで紹介していこう。今回は、フェラーリ エンツォフェラーリだ。

フェラーリ エンツォフェラーリ(FERRARI ENZO FERRARI:2002〜2004)

画像: フェラーリの総帥、エンツォ・フェラーリの名を冠した唯一のフェラーリ。そういう意味でも特別な一台だ。

フェラーリの総帥、エンツォ・フェラーリの名を冠した唯一のフェラーリ。そういう意味でも特別な一台だ。

フェラーリは2002年の創業55周年を記念して、創始者でありコマンダトーレ(総帥)と呼ばれたエンツォ・フェラーリの名を冠したスーパースポーツカーを発表する。正式車名は「フェラーリ エンツォフェラーリ」だが、社名のフェラーリは付けずに呼ばれることが多い。エンツォフェラーリは、伝統のV12エンジンをミッドシップ搭載する21世紀最初の限定生産車として知られる。当初は349台の予定だったが、50台が追加されて結局399台が生産された。

デザインは、当時ピニンファリーナに在籍していた「ケン・オクヤマ」こと奥山清行によるもの。明らかにF1グランプリマシンをインスパイアしたとわかるフロントノーズ。リアを見れば伝統の丸型テールランプが備わる。そして、スーパーカーの必須アイテムとなったバタフライドア(マクラーレン風にいえばディヘドラルドア)を備える。フェラーリがバタフライドアを採用したのは珍しい。

シャシは全体がカーボンファイバーと、ハニカムサンドイッチ構造のアルミニウムパネルで製作された。そのシャシに流体力学をもとに造形され、効果的なグランドエフェクトを発生する超空力ボディを架装している。エアロダイナミクスにはスクーデリアフェラーリ(F1GPチーム)のノウハウが生かされ、300km/hで走行中のダウンフォースは775kgに達したといわれる。

コクピットの後ろに縦置きミッドシップマウントされたエンジンは、当時のフェラーリの主流であった65度のV型12気筒DOHC。可変吸排気バルブタイミング機構などF1グランプリで得た最先端のテクノロジーが投入され、最高出力は660psを発生しながら、低回転域のパワーを増強して幅広い速度レンジでのバランスが追求されている。

画像: リアミッドに縦置きされるV12エンジンは圧縮比11.2とボッシュ モトロニックME7により、660psと657Nmを発生。

リアミッドに縦置きされるV12エンジンは圧縮比11.2とボッシュ モトロニックME7により、660psと657Nmを発生。

トランスミッションはF1マチックと呼ばれる6速のセミATを組み合わせるが、変速のタイムラグを極力排除するため、シフト時間はわずか0.15秒にまで短縮されている。ステアリングホイールには、F1マシンのように車両制御のためのボタンやスイッチ類が配されていた。

ブレーキシステムはブレンボによって特別に開発されたものだが、CCM(カーボンセラミック)製のローターなどにはF1テクノロジーが注ぎ込まれていた。タイヤはブリヂストンのポテンザRE050スクーデリアで、当時F1GPで密接な関係にあったブリヂストンが専用に開発したものだ。

エンツォフェラーリは、F1テクノロジーが注ぎ込まれたスーパースポーツカーだったが、ただ高性能というだけでなく、ASRと呼ばれる車両姿勢安定制御機構を搭載して、ロードカーとして極めて高い安全性を確保していた。安全な超高速走行へのフェラーリの対応は、その後のスーパースポーツカー開発にとって見逃せない大きなポイントとなっていく。

画像: フェラーリが普通のスイングドアでなくバタフライドアを採用したのは珍しい例だ。

フェラーリが普通のスイングドアでなくバタフライドアを採用したのは珍しい例だ。

フェラーリ エンツォフェラーリ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4702×2035×1147mm
●ホイールベース:2650mm
●車両重量:1255kg
●エンジン種類:65度V12 DOHC
●総排気量:5998cc
●最高出力:660ps/7800rpm
●最大トルク:657Nm/5500rpm
●燃料・タンク容量:無鉛プレミアム・110L
●トランスミッション:6速AMT
●駆動方式:リア縦置きミッドシップRWD
●タイヤサイズ:前245/35ZR19、後345/35ZR19

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