2008年2月、アウディから待望の2ドアクーペ「A5」が登場した。パワートレーンのレイアウト変更という英断の末に誕生した美しいクーペはどんなモデルだったのか。美しいデザインを作り出すための前後重量配分の適正化は走りにどんな効果をもたらしたのか。ここでは日本上陸早々に行った試乗の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年4月号より)

A4の美しさを予感させるクーペの知的な出で立ち

「A5」というネーミングからも察しがつくように、その生い立ちをありていに言えば、「A4のクーペ版」となる。日本ではほとんど同じタイミングでデリバリーが開始となるA5と新型A4だが、ヨーロッパ市場ではA5は2007年3月のジュネーブオートサロン、新型A4は2007年9月のフランクフルトショーでデビューと、意図的に半年ほどの時間差が与えられてきた点に注目したい。

すなわち、こうしてアウディラインアップの中では最もポピュラーな存在であるA4のモデルチェンジに先駆けて、長年の「空白地帯」を埋めるA5を先に披露したことは、フル4シータークーペ市場への新規参入をより強いインパクトでアピールしたい、新型A4の新しいパッケージをスムーズに展開していきたい、というアウディの戦略と見て取れる。

そんなA5とは、昨年2007年5月のイタリアで開催された国際試乗会以来の再会となった。

今回用意された日本仕様の3.2FSIクワトロは、オプション設定のアルバブルー・パールエフェクトという、ちょっと淡いブルーのエクステリアカラーを纏ったモデルだった。さらに、やはりオプション設定であるバング&オルフセン製のオーディオや、車速感応式の電子制御可変ギア比ステアリングや同じく電子制御による可変減衰力ダンパーなどからなる「アウディ ドライブセレクト」、さらにはリアビューカメラなども装備し、本体価格の695万円に64万円を加えた総額759万円の仕様となっていた。

右/左の双方が選択可能であるS5に対し、A5のステアリング位置は右のみの設定。また、トランスミッションはS5も含め6速ATのみの設定で、欧州では当然用意のあるMT仕様は導入されないという。

それにしても、青く澄んだ日本の空の下で改めて目にするA5のルックスは、とても知的で魅力的だ。R8ばりに表情が豊かな例の「シングルフレームグリル」を中心とした顔付きには多少なりとも賛否が分かれそうだが、その伸びやかなシルエットを流麗と感じない人などきっといないだろう。

そんなA5の美しさを文字通り「下から支える」のは、やはり「適正化された前輪位置」の影響がとても大きいと実感する。もしも旧来のレイアウトを踏襲し、前輪が15cmほども後ろに存在したとしたら……なるほどそれでは『美しいクーペ』の実現など到底不可能だったと思わざるを得ない。ここで、これまでアウディにフル4シーターのクーペが存在しなかった理由にも、思わず納得してしまうのだ。

画像: 新型A5に搭載される3.2L V6FSIは従来のものと同じものではなく、新たにアウディバルブリフトを採用して開発し直されたもの。フロントアクスルとエンジン搭載位置にも注目。

新型A5に搭載される3.2L V6FSIは従来のものと同じものではなく、新たにアウディバルブリフトを採用して開発し直されたもの。フロントアクスルとエンジン搭載位置にも注目。

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