1974年にデビュー以来、コンパクトFF車のベンチマークであり続けるフォルクスワーゲン ゴルフ。日本でも間もなく8代目となる新型が発表されるが、その前に初代から現行型までのゴルフを振り返ってみたい。第3回は初代ゴルフに追加されたホットモデル、GTIについて語ろう。

当初GTIは、5000台の限定生産から始まった。これはモータースポーツのホモロゲーションに必要な台数だったともいわれる。ただ、市場の反応が予想をはるかに超えて広がり、結局46万1690台が生産されることになる。ちなみにゴルフ1全体では1983年までに678万50台が生産されている。

ゴルフはエンジンだけでなく、足回りも前後スタビライザーやビルシュタイン製ダンパーなどで強化された。スタイリングとしては、今の基準からすれば追加物が控えめだが、そのセンスがよかった。シルバーのモール類はフロントマスクのVWエンブレムまですべてブラックアウトされ、フロントエンドは周囲の縁取りだけが赤く、これがGTIのトレードマークとなった。室内ではチェック模様のシートが特徴である。

ボディサイドは、黒い樹脂製のプロテクターのようなフェンダーが追加された。ただノーマルのゴルフでもフェンダーフレアは広がっており、これはGTIのような高性能モデルで幅広タイヤを履くことを想定して、コストダウンのために途中でデザインを変更して全車その仕様に統一したといわれる。ジウジアーロはこの変更が不満だったと後に明かしている。

GTIはアウトバーンに革命をもたらしたことが語り草になっている。ヨーロッパの高速道路では、日本のように遅いクルマが追い越し車線に居座るようなことはなく、遅いクルマは外側の走行車線、速いクルマが内側の追い越し車線を走るという「秩序」が、しっかり守られている。追い越し車線をぶっとばすのは直6やV8を積む大型のメルセデスのような大出力車で、非力で小型のフォルクスワーゲンなどは走行車線を走るのが当たり前だった。

ところがGTIが出現して、この「秩序」が乱れ、下克上の状態となった。「小さいゴルフが平然と追い越し車線を高速走行しているぞ、なんだあれは!」、となったのだ。ちなみに、GTIの最高速は180km/hに達していた。(文:武田 隆)

画像: 8世代のゴルフ GTI。「赤いアクセント」が形を変えて最新モデルまで受け継がれているが、4世代目GTIだけはそれがなかった。

8世代のゴルフ GTI。「赤いアクセント」が形を変えて最新モデルまで受け継がれているが、4世代目GTIだけはそれがなかった。

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