V90とV90クロスカントリーに日本導入以来初めての改良が施され、エクステリア&インテリアの一部変更とすべてのパワートレーンの電動化を実施した。ここではその中でも電動スーパーチャージャーを搭載した「B6」モデルの3台をテストドライブした。(Motor Magazine2021年1月号より)

デザインの神通力に加え走行フィールも上質で洗練

もっとも、新世代ボルボが輝き続けているのはデザインの神通力だけが理由ではない。彼らが不断の努力でハードウェアの改良に取り組んでいることも新鮮さを保つ秘訣だろう。

そうした努力のひとつがマイルドハイブリッドシステムを装備したパワートレーンの投入である。ボルボは今、マイルドハイブリッドの採用に積極的で、XC60やXC90に続き、このほどV60やV90にもマイルドハイブリッドモデルが設定された。近ごろ話題のマイルドハイブリッドだが、これはどんなもので、何を目的としているのか?

ヨーロッパの最新排出ガス規制はユーロ6dで、これにはRDEという新しい計測方法が含まれている。一時期ニュースなどで報道されて注目を集めたRDEは、公道を走行中に発生する排出ガスを計測する点に最大の特徴がある。

RDEでは、従来のモード走行以上に大きなエンジンの負荷領域を用いるが、当然、そんなときにもエミッションが基準値を超えることは許されない。そこで急加速が必要になってもエンジンに大トルクを発生させることなく、バッテリーに蓄えた電力でモーターを駆動させて有害物質の発生を抑えるのがマイルドハイブリッドの主な役割である。

では、なぜモーターだけで走行できるフルハイブリッドにしなかったかといえば、それがコストに大きな影響を及ぼすからだ。200Vを超す高電圧を用いるフルハイブリッドは安全基準が異なり、高電圧部品に加えて安全対策にもコストがかかる。そして安全基準の境目が60Vにあるため、この上限に近い48Vがヨーロッパで規格化され、数多くのモデルに採用されているのだ。

ちなみに、ボルボのマイルドハイブリッドは0.5kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、10kW/40Nmのモーターを駆動する。単純計算すれば最大50秒間にわたって10kw(約14ps)が上乗せされるのだから、その効果は見逃せない。

新型V90はエンジン自体もアップデートされている。たとえば、従来のT6に相当するB6では、これまでの機械式スーパーチャージャーを電気式に置き換えることでフリクションロスを低減。さらに気筒休止機構を導入したほか、使用される部品をほぼすべて一新してマイルドハイブリッドに最適なエンジンに仕立てられた。そんな新エンジンを積んだV90、試乗すると実に上質で洗練された走行感覚が印象に残った。

まず、エンジン始動にはセルモーターを使わずにハイブリッド用モーターを用いるため、セルモーター特有の「キュルキュルキュル」という騒音を発することなく、「シュン」と瞬間的に、そして滑らかにエンジンは動き出す。これだけでも上質さというか洗練度はずいぶん違う。

立ち上がりが鋭い電気モーターを活用するとはいえ、発進のマナーはスムーズで、ドライバーの意に反した動きはしない。そしてマイルドハイブリッドがもっとも本領を発揮する中間域の加速では、アクセルペダルの踏み込み量に合わせて、まるで大排気量エンジンのようにスムーズに、そしてレスポンスよく加速していく。

こんな時、小排気量エンジンであればギアボックスがキックダウンしてエンジンを高回転まで引っ張るところだが、B6は同じギアのまますっと加速に移るところが上品で、なによりストレスが少ない。この辺がマイルドハイブリッドの最大の魅力といえる。新型の改良点はパワープラントだけに留まらず、足まわりの改良にまで及ぶ。

画像: 「B6」は従来の機械式に代わり電動スーパーチャージャーを採用。レスポンスの向上、NVHの低減、エンジン重量の軽量化を実現した。<90クロスカントリーB6 AWD プロ>

「B6」は従来の機械式に代わり電動スーパーチャージャーを採用。レスポンスの向上、NVHの低減、エンジン重量の軽量化を実現した。<90クロスカントリーB6 AWD プロ>

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