2008年6月、BMW X6が正式に日本に上陸した。そのSUVへの独自のアプローチは大きな注目を集めたが、そのほかにもM3クーペ&セダンにM-DCTを搭載するなど、BMWは多方面で積極的な動きを見せている。Motor Magazineでは2008年9月号のドイツ車特集の中で、BMW X6の国内試乗をとおして、BMWの最新動向を追っている。今回はその模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年9月号より)

クーぺとは低く流麗なものという先入観を覆すフォルム

欧米での発売開始以来、さほどのタイムラグもなく日本に上陸したX6。このモデルを目の当たりにしてみると、何はともあれ、まずはそのボリューム感のほどに圧倒されてしまった。

全長×全幅サイズは、骨格構造のベースとなったX5に対して長さでは25mm、幅で50mmとわずかなプラスに留まる。その一方で、1690mmという全高サイズは75mmのマイナスという関係。やはりこの点に関しては「クーペの面目躍如」ということであろうか。

しかし、それにもかかわらず第一印象としては「X5よりもずっと大きい」とさえ感じられたのは、ルーフの頂点からなだらかな下降線を描いて終わるテールエンドの部分が、「クーペとは低く流麗なもの」という先入観からするとありえないほどの高さであることも一因だろう。何しろ、ドアハンドル部分を経由して走るサイドのキャラクターラインと、ベルトラインがともにシャープに前傾している。それもあって「上半身」では明らかなクーペフォルムを示すこのモデルの造形は、しかしそうしたアッパーボディ部分が、かつて見たことがないほど高い位置に存在しているのが大きな特徴だ。

中でも、ゲート部分に埋め込まれた例のプロペラ模様のエンブレムが、まるで目の前ほどの高さで見えるリアビューは圧倒的なボリューム感。そうした「高さ」というものが大柄なサイズをさらに強調する結果になっている。

一方で、なるほどその全体的なプロポーションは、「クーペ」の名が素直に納得できる美しさだ。これで地上高が210mmも確保され、それなりのラフロードもこなしてしまう踏破力の持ち主だというのだから、そのデザインの巧みさは一種マジック的なものとも思えてくる。ただしそうしたルックスはやはりある面で、実用性の犠牲の上に成り立っている感も否めない。

たとえば、前後席ともに乗車時は頭部がピラーと干渉しがちであることに留意する必要があるし、降車時には、テスト車にオプション装着されていたアルミニウムランニングボードがステップ役を果たしてくれることに重宝した。

ちなみにキャビン空間は大人4人にとっては十分で、後席の頭上にもそれなりの空間が確保される。だが後席使用時で570L、後席アレンジ時には1450Lというデータを謳うカーゴルームは、そのフロア面があまりにも高いため、重量物を積み込むのは容易ではない。

そもそも、急傾斜のバックライト(リアウインドウ)を備えたテールゲートは、パワー開閉機構が標準装備されるから良いようなものの、もしこれがマニュアル式だったら小柄な人には開閉すら難しいだろう。

一方、ダッシュボードまわりの造形はX5のそれと基本的に同様で、優れた各部の質感も含めてX6というモデルが狙うキャラクターにもなかなか似合っていた。ただし、ドライビングポジションは意外にもSUV風にヒール段差(フロアからヒップポイントまでの距離)が大きく、クーペ流儀に少し脚を前方に投げ出し気味に座らせるのではないか、という事前の予測は外れることになってしまった。

画像: ルーフ形状の違いから着座時の空間的な感覚は異なるが、X6の内装はほとんどの部分においてX5と共通するイメージでまとめられている。

ルーフ形状の違いから着座時の空間的な感覚は異なるが、X6の内装はほとんどの部分においてX5と共通するイメージでまとめられている。

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