荷室空間のゆとりはRS6アバントにも匹敵
流れるように美しいファストバックのルーフラインを持つRS7だが、アウディスポーツバックの伝統にのっとり、そのスペースユーティリティは極めて高い。たとえば、身長171cmの私が後席に腰掛けても頭上にはまだ6cmほどの空間が残っているほか、ひざまわりと前席の間にも20cmを優に越す余裕があった。しかもラゲッジルームは535Lの大容量。これはRS6アバントより30L少ないだけだというのだから、驚かずにはいられない。
したがってロングクルージングはお手のもの。そのあり余るパフォーマンスがドライバーに自信と余裕を与え、普段よりもむしろゆっくりと走りたくなるのだから不思議なものだ。ある夜のこと、人影まばらな高速道路を流していると、対向車や前走車が現れるたびにアダプティブハイビームを備えたLEDマトリクスヘッドライトがストロボライトのように明滅し、暗闇の中に巨大な光のページェントを描き出した。そのとき、私は心の中で「このまま夜通し走り続けたい」とひとり呟いていた。
ところで「RS」の歴史は、RS2アバントから始まった。そのため、スポーツ性とともに多用途性を兼ね備えていることがその大きな特徴となっている。つまりクーペというカタチはある意味で、異端的存在と言えるかもしれない。
しかし、ここでひとつ付け加えておきたい。それはアウディのクーペがけっして、なんらかの我慢を強いるものではない、ということだ。「狭く、使い勝手が悪いカタチ」というクーペに対する思い込みは、忘れて欲しい。もちろん、絶対的なスペースユーティリティはセダンやアバントにはかなわない。けれどアウディの巧みなデザインワークは、そのネガティブを巧みに抑えている。事実、RS5とRS7の後席は、オトナでも十分腰掛けられるほど実用的だ。
実は今回の取材でも男性3人が1台に乗り込み、200kmほどを移動する機会があった。トランクには3人分×一泊二日の旅支度とともに脚立、三脚を含む撮影機材を満載。それも2ドアのRS5クーペに、である。もちろん後席片側は荷物置き場にはなったけれど、それなりに取材旅行を満喫することができたことは、ある意味驚きだった。