3L 直6ツインターボ+FRの「BMW M4 コンペティション」とあえて比べてみたのは、自然吸気の4L対6+MRの「ポルシェ ケイマンGTS4.0」と3.8L V6ツインターボ+4WDの「日産 GT-R」。エンジンタイプも駆動方式も異なる日独スポーツカーの中で、M4が見せる魅力を検証する。(Motor Magazine2021年6月号より)

ケイマンの持ち味を引き出す6気筒搭載の真打ち登場

そんなM4に比べると、ポルシェの718ケイマンは、一度はシリーズすべてで過給機を加えた上で排気量ダウン。さらに「レスシリンダー」化まで敢行して賛否両論の嵐を巻き起こしておきながら、そんな舌の根も乾かぬうちに、今度は過給機を取り去った上で大排気量化というまったく逆の手法を採用。さらにマルチシリンダー化を実行して人々を煙に巻いたポルシェの最新ミッドシップ系モデルの存在は、興味深い。

そもそもポルシェが、従前の6気筒ユニットから2気筒を省いてできた空間にターボチャージャーを装着した718ボクスター/ケイマンを世に送り出したのは2015年末のこと。そんな心臓のフルチェンジの目的は、例によって「出力と燃費の同時向上」と謳われ、実際その加速の能力は明確に増す結果ともなっていた。

とはいえ、そこは知る人ぞ知るマーケティングカンパニーでもあるポルシェ。あくまで個人的にではあるが、その決断には「この時点で911は6気筒、ミッドシップは4気筒と差別化をより明確にしたい」といった社内の積年の思いや、「2L以下のモデルには大きなインセンティブが与えられる中国市場で、存在感をアピールしたい」という、マーケティング上の理由も存在したのでは・・・という思いが頭をよぎる。

一方で、現在でもスポーツカーのメイン市場であり、「普通のエンジンが6気筒」というアメリカでは、4気筒化はシェアを大きく落とす要因になったというニュースも聞くのも事実だ。このあたりの状況も踏まえ、急遽新しい6気筒モデルを加える決断に至ったのではないか・・・、という筋書は、これまでのこのブランドの「機を見るに敏」な商法を振り返ると、あながち大外れでもないように思えてくる。

画像: ミッドシップレイアウトゆえに、後2輪駆動でありながらもトラクション能力が十分。(ポルシェ ケイマンGTS4.0)

ミッドシップレイアウトゆえに、後2輪駆動でありながらもトラクション能力が十分。(ポルシェ ケイマンGTS4.0)

そうした「お家の事情」はどうであれ、新開発された自然吸気の4L水平対向6気筒ユニットを積むGTS4.0をドライブしてみると、「やっぱり真打ちはコチラでしょう!」と快哉を叫びたくなる仕上がりであった。

なるほど、絶対的な加速力では、ターボ付き4気筒に先行を許す場面もある。それでも4Lという排気量ゆえ蹴り出しは力強く、何よりもより緻密感に富んでスムーズな感覚が、「こちらの方がより上質」という無形の印象をもたらすこととなっていたからである。ミッドシップレイアウトゆえに、後2輪駆動でありながらもトラクション能力が十分というのも、このモデルならではの特徴だ。

もっとも、そんなケイマンGTS4.0が放つ緻密で官能的なサウンドには、一点の注釈が必要だろう。実は比較的低負荷の領域で気筒休止が働いて3気筒運転になると、その結果の「濁音系」のこもり音がなかなか盛大だ。アイドルストップのキルスイッチを押せば同時にこちらのシステムも作動を止めるが、せっかく備わる機能を殺すのは少々引っかかる。ここはもう一歩の洗練を望みたい。

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