他を圧倒するスピード性能。熟成の域に入ったGT-R
一方、ドイツ勢とはまったく異なる立ち位置にいるのが、今回の日本代表でもある日産GT-R。熟成が進み、また開発責任者が代わったことで当初のモデルからはクルマづくりのベクトルに多少の変化は認められるものの、それでもまず「他を圧倒するスピード性能」こそが最大の売り物というのは、デビューから13年間、GT-Rに不変の特徴と言っていい。
かくして、「スポーツカーの命は、まず圧倒的なスピード性能」というプリミティブな魅力のあくなき追求には敬意を表したい。一方で、パワーステアリングは昨今では同類を探すのが難しくなりつつある油圧式で、パーキングブレーキも「手動式」。クルーズコントロールは単純な車速の維持機能しか持たず、いわゆる「ADAS(先進運転支援システム)」関連のシステムは皆無と、今となってはその商品性に多くの課題を残すことは避けられない。
ケース剛性の高さをサーキットでの運動性能に生かす発想のランフラット構造を採用する専用タイヤも、それがわだち路面でのワンダリング挙動など、外乱に対する不寛容さに直結している印象は否めない。「リラックスした走り」が不得意科目というのは、ロードカーとして見た際のGT-Rの大きな弱点であることは間違いない。一方で、絶対的な速さという点にかけては、さしものM4もケイマンGTS4.0も「まったく寄せ付けない」実力の持ち主だ。
当初は800万円切りからの価格で登場したGT-Rも、今や全グレードが1000万円超。それでも「速さ」を軸としたコストパフォーマンスでは、他のあらゆるモデルを圧倒する。スーパーカーはおろか、「ハイパーカー」と呼びたくなる実力を、これほどまでに長く維持し続けるのは、不断のリファインの賜物と言っていい。
こうして、ライバルというよりは「三者三様の立ち位置を持つこと」が魅力というのが今回のモデルたち。果たして、「EVスポーツカー」が誕生の折、こうした楽しみは残されているのだろうか。
(文:河村康彦/写真:村西一海、伊藤嘉啓)
BMW M4クーペ コンペティション 主要諸元
●全長×全幅×全高:4805×1885×1395mm
●ホイールベース:2855mm
●車両重量:1730kg
●エンジン:直6DOHCツインターボ
●総排気量:2992cc
●最高出力:375kW(510ps)/6250rpm
●最大トルク:650Nm/2750-5500rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・59L
●WLTCモード燃費:10.1km/L
●タイヤサイズ:前275/35R19、後285/30R20
●車両価格(税込):1348万円
ポルシェ ケイマンGTS4.0 主要諸元
●全長×全幅×全高:4405×1800×1285mm
●ホイールベース:2475mm
●車両重量:1480kg
●エンジン:対6DOHC
●総排気量:3995cc
●最高出力:294kW(400ps)/7000rpm
●最大トルク:420Nm/5000-6500rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:MR
●燃料・タンク容量:プレミアム・64L
●WLTCモード燃費:9.2km/L(EU複合)
●タイヤサイズ:前235/35R20、後265/35R20
●車両価格(税込):1101万円
日産 GT-R プレミアムエディション 主要諸元
●全長×全幅×全高:4710×1895×1370mm
●ホイールベース:2780mm
●車両重量:1770kg
●エンジン:V6DOHCツインターボ
●総排気量:3799cc
●最高出力:419kW(570ps)/6800rpm
●最大トルク:637Nm/3300-5800rpm
●トランスミッション:6速DCT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・74L
●WLTCモード燃費:7.8km/L
●タイヤサイズ:前255/40ZR20、後285/35ZRF20
●車両価格(税込):1232万9900円