憧れを行動で実現させて知った世界が道を開いた
最初のボルボだったV70が、現在の山口さんに大きな影響を与えたことをご本人自ら認めている。「理学療法士として勤めていた病院の院長がボルボ240エステート(=ステーションワゴン)に乗っているのを見た時から『いつかは自分もボルボのステーションワゴンに乗れるようになりたい』と憧れていました。『なりたい』だけでなく『ならなければ』と決意しました」
『いつかは自分も〜』と憧れることは誰にでもできる。山口さんが違ったのは、具体的な行動として将来に起業するための準備をすぐに始めたことだった。
そのV70は、まだ結婚前だった奥様に半分を出してもらって、やっとの思いで買った。
「分不相応かもしれませんでしたが、ドアを閉めた時の重厚感や高品質な感じなど、それまで乗っていたクルマと違っていて、いい買い物ができたと感激しました」
価格は530万円だった。
「ボルボを一台買うことはできるかもしれませんが、ずっと乗り続けて、時には買い換えたりできるようになるには自分の事業を発展させていかなければなりません」
現在50歳の山口さんが起業したのは、40歳の時だった。困難や苦労にも見舞われたのではないだろうか。
「4年前には、事業の拡大に伴って資金が追い付かず、経営難に陥ったことがあります」
乗っていたハーレーダビッドソンのモーターサイクルも、手放さなければならなかった。その後に業績を回復させることができたので、買い直した新しいハーレーダビッドソンの「ファットボーイ」に、いま乗っている。
他にない特色を備えると、次なる目標も見えてくる
高齢者介護施設を経営するにあたって、山口さんが心掛けて実行しているのは、他にない特色を出すことだった。具体的には、デイサービスにリハビリテーションを組み合わせて、理学療法士を常駐させることだ。身体機能回復に軸足を置いたデイサービスが評価され、アールアンドシー湘南はその業績を伸ばし続けている。
筆者の母親も地域のデイサービスを利用しているので、山口さんの取り組みはとても興味深く聞こえた。それに関連した話が広がっても、山口さんは専門家でもない筆者や取材スタッフたちの話に耳を傾け、掴むべきヒントは逃さないように対応してくれた。そうしたところにも、好調に事業を進めていっている経営者の勢いを見る思いがした。
「スウェーデンには、歩行器やバギーなど、高機能なリハビリテーション用機材が多く、私のところで使っているものもあります」
現在の施設の内容を充実させ、さらに施設数を増やすべく、東奔西走する日々は続きそうだ。
「モーター走行の良さが実感できたので、次は電気自動車に乗ってみたいですね」
2021年中に日本で発表される予定のボルボのピュアEV「C40 RECHARGE(リチャージ)」に山口さんも興味津々だ。ボルボが人生を変えるキッカケになったと明言する山口さんには自信とともに清々しささえ漂っている。PHEVによる電動化の効能が、また次の飛躍を生み出すキッカケになるのだろう。(文:金子浩久/写真:永元秀和)
取材エピソード(文:Motor Magazine編集部)
山口さんが初めてのボルボ車、V70を購入したのは千葉県に住んでいた時のこと。その販売を担当してくれたのがボルボの正規ディーラー、東邦オートの「ボルボ・カーズ千葉店(当時)」 セールススタッフだった武蔵哲也氏だ。その後、メンテナンスや買い替えなどで山口さんと武蔵氏との関係は長く続いたが、起業した山口さんは茅ヶ崎に転居。
しばらくして近くのディーラーである「ボルボ・カー鎌倉」に連絡を取ってみたところ、その電話を受けたのが、なんと同店の店長として赴任していた武蔵氏。こちらも東邦オートが運営する店舗で、久しぶりの再会を果たしたという。トップレベルのセールススタッフとして広く知られる武蔵氏は現在、「ボルボ・カー幕張」の店長として活躍されている。