とても快適な乗り心地。SPAは熟成が進んでいる
まずはT8 ツインエンジン AWDで走り出す。エンジンスタートは、センターコンソール上のノブを右に捻って行う。停止時も、再度右へ捻るよう仕様は改められている。
思わず目を見張ったのがスタートダッシュの快活さだ。パワートレーンはXC90と共通。最高出力318ps、最大トルク400Nmの2L 直列4気筒ターボ+スーパーチャージャーエンジンで前輪を、同87ps、240Nmの電気モーターで後輪を駆動する。一方で車重は2170kgと170kgも軽いから、その差が余裕に繋がっているのだろう。
電気モーターのドライバビリティへの恩恵は大きい。アクセルペダルに足を乗せた瞬間のツキは良いし、上り勾配をグイグイと加速していくパワフルさも備えている。
乗り味は全般に穏やかな感触に終始する。標準装備される電子制御式4輪エアサスペンションは今どき珍
しいくらいソフトなセッティングとされていて、当たりの柔らかさは20インチというタイヤサイズがにわかには信じられないほどだ。路面の継ぎ目などを乗り越える際には、やや鋭い入力があるものの、全体的には非常に快適と評することができる。ボルボがラージクラスに使っている基本アーキテクチャーのSPAは、新しいモデルが登場するごとに熟成が進んでいるようで、ライドコンフォートの向上を実感できる。
この良好な乗り心地にも、全高の低さがひと役買っているに違いない。それだけ柔らかいのに姿勢は十分にフラット感があって、頭の横揺れ、縦揺れがまったく気にならず、心地よく乗っていられるのである。強いて言えば直進性には、やや甘さを感じなくはないが、饒舌なステアリングフィールのおかげで、問題と感じるほどではない。
そのステアリングはレスポンスも決して悪くなく、思ったとおりのラインをなぞることができる。車重があるだけにコンフォートモードで攻めるような走りをすると、操舵に対して徐々に挙動の遅れが出てくるようになる。あくまで適度なペースで、余裕を楽しむクルマである。
当然ながら新型XC60も、ボルボ自慢の先進安全・運転支援装備であるインテリセーフが全車に標準で装備される。この新型XC60が初採用の新たな機能も多数盛り込まれた。
機能総数は実に16以上にも及ぶだけに、すべてにはとても触れられないが、たとえば夜間を含む歩行者・サイクリスト・大型動物検知機能を備えた緊急自動ブレーキのシティセーフティには、必要な場合に操舵をアシストし、さらに内輪のブレーキをつまんで向きを変えやすくする機能が加わっている。またBLIS(ブラインドスポット インフォメーションシステム)は、後続車が来ているにもかかわらず車線を移ろうとした時、修正操舵を行うようになった。そして、センターラインを超えて対向車線に進入してしまい、衝突の危険が高まった時の車線引き戻し機能も搭載されている。普段の走りでは、これらは存在を高らかに主張してくるわけではない。しかしながら必要な時には、スッと手を差し伸べてくれるのが有り難い。