入念な研究の成果による凝りに凝ったボディ構造
ポルシェ社の研究開発担当取締役であるヴォルフガング・デュルハイマー氏の開幕スピーチからスタートしたパナメーラのワークショップイベントは、ドライブトレーン、シャシ/サスペンション、ボディ、アコースティック(サウンドデザイン)という4つのパートを、担当エンジニアが各30分ほどの時間をかけてレクチャーを行うというスタイルで進行した。
ポルシェ自身が「4ドア グランツーリスモ」とそのキャラクターを紹介するパナメーラ。個人的に最も興味を引かれた内容は、実はボディ構造に関してだった。
4970×1931×1418mmというボディサイズの、ユニークなファストバックプロポーションを備えるパナメーラ。実はそれを構成するのは、類例がないほど多様な材料が用いられた、「超」の文字を加えても良いほどのハイブリッドボディであることが判明したからだ。
パナメーラのボディに適用された基本的な考え方は「適材適所の素材使用による軽量化」というもの。ちなみに適材適所とは、パナメーラが4人乗りとして相応しい居住空間を求められたモデルであることや、スポーツカーメーカーとしポルシェの作品であることなども、もちろん勘案されている。
パナメーラのボディに採用されのは、重量比にして75%がスチール、そして25%がアルミやマグネシウムといった軽合金及びプラスチックなどの複合素材である。
具体的には、キャビン部分のフロアを構成するのはマルチフェーズスチール(多層鋼)がメインで、サイドパネルやルーフ周りには深絞り用スチール、あるいは高張力鋼などを採用する。ドアシルやセンタートンネルなど、とくに高強度が必要とされる部分にはボロンスチールが使用される。また、ダッシュボード部分には、ハイドロフォーム(液圧成形)材の姿も見ることができる。
一方、フロントフードやドアパネル、テールゲートなどの「蓋もの」については、アルミ材が多用される。同時に、サイドフレームやフェンダーにもアルミ材を用いるとともに、フロントエンドマウントにはマグネシウム合金を採用するなど、フロントセクションには積極的に軽量素材を用いた「ハイブリッド構造」とすることで、最もフロントまわりが重い「ターボ」でも52:48という理想的な前後重量配分を達成している。
また、凝りに凝った左右4枚のドア構造も興味深いもの。前述のようにアウターパネルにはアルミ材を使用するが、内部フレームは同じアルミ素材でもレーザー加工を行ったダイキャスト製。さらに側面衝突時の変形を抑えるためのインパクトビームには、アルミでも強度の高い押し出し成型品を使用する。また、そのウインドウフレーム部分にはマグネシウム合金を採用し、周辺ボディパネルとの完全フラッシュサーフェス化を実現している。
ちなみに、かくも軽量化にチャレンジするのなら「ボディ全体をアルミ化すれば良いのではないか?」という疑問は誰もが抱く事柄であろう。だが、とくにパナメーラのようなモデルでそれを行うのは、決して得策ではないという。
なぜならば、アルミ材を用いて必要な強度を得ようとすれば、その断面積はスチール材の場合よりも大きくなってしまうからである。それを、豊かな居住空間も求めるこうしたモデルで行うのは、望ましいことではないというのが彼らの見解なのだ。
ところでパナメーラの空力データは、Cd値がSグレードで0.29、ターボグレードで0.30。またターボのリアウインドウ下端部には、90km/hでポップアップした後に中央分割部から左右に展開して面積を拡大させ、205km/hまではマイナス3度、それ以上の速度ではプラス10度の迎え角に可変される4ウェイアクティブリアスポイラーが装着される。これにより、前後輪ともにダウンフォースを与えることに成功しているという。