クルマの操縦性を支える大きなポイントがサスペンション性能だ。ダブルウイッシュボーンやマルチリンクなど形式による区別は多くあるが、その前に大きく車軸懸架式と独立懸架式に分けられる。それぞれについて解説しよう。

車軸懸架と独立懸架は優劣ではなく適材適所

サスペンション形式はいろいろあるが、大別すると車軸懸架(リジッドサスペンション)式と独立懸架(インディペントサスペンション)式に大別できる。ちなみにサスペンションの日本語訳は懸架装置となる。

画像: フロントに独立懸架(ストラット)式、リアに車軸(5リンク)式を採用した日産キックス(2008年)のサスペンション。

フロントに独立懸架(ストラット)式、リアに車軸(5リンク)式を採用した日産キックス(2008年)のサスペンション。

構造のシンプルさという観点で言えば、車軸懸架式が勝る。これは、左右輪を一本の車軸(アクスル)でつないだものだ。この形式は頑丈というのも大きなメリットとなる。ただし、左右輪がつながっているために、片方の車輪が動くと、反対側の車輪も連動して動いてしまうのがデメリットとなる。同時に上下するだけなら問題ないが、片輪が上がって片輪が下がるなどのときはロールが過大になることもある。

また駆動輪に車軸懸架式を採用する場合にはホーシングとデフという重量物が一体となっているために、バネ下重量が重くなるのも運動性能を考えると好ましくない。そういうこともあり、左右のサスペンションが別々に動く独立懸架が採用されることになった。これは、アクスルを持たないか、持っていたとしても、等速ジョイントなどで角度が付けられるようになっている。とくに駆動を受け持たない前輪には当たり前に使わるようになった。

画像1: 「きちんと知りたい!自動車サスペンションの基礎知識(飯嶋洋治 著/日刊工業新聞社)」より転載。

「きちんと知りたい!自動車サスペンションの基礎知識(飯嶋洋治 著/日刊工業新聞社)」より転載。

図で見ていこう。上図は車軸懸架式と独立懸架式のクルマが、片方のタイヤが道路の突起に乗り上げた状態を示している。車軸懸架式では、片方のタイヤが持ち上がっただけでボディ(車体)全体が傾いている。この状態で走行していると、パッセンジャーもこれに合わせて揺すられることになる。

これに対して独立懸架式は、突起に乗り上げた方の車輪は持ち上がっているが、ボディ全体の傾きに影響していない。そのためパッセンジャーも走行時に安定した状態を保つことができる。もちろんサスペンションストロークに限りがあり、アライメント変化も起こるので、この図とまったく同じになるわけではないが、傾向として車軸懸架式と独立懸架式の違いを表していると言える。

画像2: 「きちんと知りたい!自動車サスペンションの基礎知識(飯嶋洋治 著/日刊工業新聞社)」より転載。

「きちんと知りたい!自動車サスペンションの基礎知識(飯嶋洋治 著/日刊工業新聞社)」より転載。

車軸懸架式は、作りが頑丈なために大きな荷重や衝撃に耐えることができるためトラックやバスなどの商用大型車のほか、悪路走破性が求められる4WD車の後輪に用いられることが多い。独立懸架式は、頑丈さに劣るものの乗り心地が良くなる傾向なので多くの乗用車に用いられている。(文:Webモーターマガジン編集部 飯嶋洋治)

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