「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、ポルシェ パナメーラS ハイブリッドだ。

ハイブリッド感はトヨタ車のほうが強い

画像: パワーユニットはカイエンで定評あるスーパーチャージドV6エンジン+モーターの組み合わせ。ミッションは8速ティプトロニック。

パワーユニットはカイエンで定評あるスーパーチャージドV6エンジン+モーターの組み合わせ。ミッションは8速ティプトロニック。

それは試乗してみても実感できた。ハイブリッド車の燃費の稼ぎどころのひとつが走行中にエンジンを停止させることだが、パナメーラS ハイブリッドはそれが頻繁で、しかも高速域まで可能だ。走行中にアクセルペダルをオフにすると、タコメーターの針がスッとゼロを指しエンジンが停止したことを知らせるが、あまり減速感はない。

これはコースティングと呼ばれ、なるべく滑走させて燃費をあげようという考え方によるもの。厳密には電気モーターが回生を行っているが、補機類やオーディオなどに消費される電力を補う分だけでごく微量だ。アクセルオフというと、停止に向けて減速を開始するときだけの操作に思えるかもしれないが、実際の走行中でもちょっとした速度調整や微妙な下り坂などで頻繁に訪れるシチュエーションなので、これによる燃費改善効果はけっこう高い。

トヨタ式ハイブリッドもアクセルオフすればエンジンは停止するが、それは約70km/hまで。パナメーラS ハイブリッドは165km/hまでエンジン停止が可能だ。もちろん、トヨタ式も高速域でアクセルオフすればエンジンが止まらずともフュエルカットが働くので燃料消費はゼロになるが、比較的強めに減速するので燃費としてみればパナメーラSハイブリッドのほうが有利になるだろう。

トヨタ式との違いは、加速側はエンジン主体の割合が大きく、電気モーターが駆動するのは強くアクセルを踏みこんだときか、低負荷でEV走行するときかで、普段はほとんどエンジンで走っている。333psもあるから動力性能的には十分だし、バッテリー容量が常に高めに保たれるので、いざ強い加速を求めたときにフルパワーが引き出せるというのがメリット。逆にトヨタ式のほうがハイブリッド感は強いだろう。

これまで高速域の効率低下がハイブリッド車のウイークポイントと言われてきたが、さすがはドイツ生まれ。そこにきっちりと折り合いをつけながら、ポルシェらしいパフォーマンスをもつパナメーラS ハイブリッド。もはや、ハイブリッドは日本のお家芸ではなくなってきているようだ。

画像: 車名エンブレム下や左右のフェンダーにある「Hybrid」のロゴ以外、エンジン車との識別点はほとんどない。

車名エンブレム下や左右のフェンダーにある「Hybrid」のロゴ以外、エンジン車との識別点はほとんどない。

■ポルシェ パナメーラS ハイブリッド 主要諸元

●全長×全幅×全高:4970×1931×1418mm
●ホイールベース:2920mm
●車両重量:1980kg
●エンジン種類:V6 DOHCスーパーチャージャー+モーター
●排気量:2995cc
●エンジン最高出力:245kW<333ps>/5500-6500rpm
●エンジン最大トルク:440Nm<44.9kgm>/3300〜5250rpm
●モーター最高出力:34kW<47ps>/1150rpm以上
●モーター最大トルク:300Nm<30.6kgm>/1150rpm以下
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FR
●EU総合燃費:14.0km/L
●タイヤサイズ:前245/50ZR18、後275/45ZR18
●当時の車両価格(税込):1483万円

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