BMWはMブランドを活用しスポーツカーの未来を模索
ジャーマン御三家のように、もはやフルラインナップブランドと化したメーカーは、その開発投資のカテゴリーが広がりすぎて苦労しているに違いない。
たとえばBMWは他ブランドと同様に新たなBEVシリーズで電化の地平を切り拓こうとする一方で、M3/M4のような伝統的エンジンスポーツモデルも進化させなければならなかった。
そういう意味では、3シリーズおよび4シリーズという基本ポテンシャルの高いスタンダードモデルを足がかりに、期待を上回る「M」を出してくれたことで、ファンならずとも安堵したに違いない。新型M3およびM4は箱型スポーツカーの原点に立ち戻ったかと思うほど、硬派でスリリングなマシンに仕上がっていた。
そしてBMWは、先日の日本カー・オブ・ザ・イヤーで「デザイン・カーオブザイヤー」を受賞した4シリーズのバリエーション拡大にも力を注いでいる。走行性能を高めたMパフォーマンスモデルとなるM440i xDriveカブリオレのデリバリーを開始する一方、7月には同仕様のグランクーペを発表するなど。大型キドニーグリルを持つ4シリーズでその存在感をアピールする。
ポルシェは2021年、「ひと段落」ついた年まわりだった。992シリーズとタイカンの派生モデルを精力的に上陸させている。
国によってはタイカンの人気が凄まじいが、やはりポルシェを代表するモデルといえる911シリーズの人気もまたとどまるところを知らない。タルガなど人気の集中したグレードではなかなか納車も進まなかったようだが、ターボSやターボのデリバリーも始まり、ここにきてようやくユーザーの手元に届きつつある。さらにGT3やGTSといった人気グレードの予約も開始されており、こちらは2022年早々にも日本上陸を果たしそうだ。
911ターボに乗って面白いと思ったことは、普通に乗っている限り純然たるグランツーリスモで、そういう意味ではスタンダードな911の延長線上にあるキャラクターの持ち主だったけれど、ひとたび乗り手が本気モードになれば、一気にスポーツカーの顔を出す。このメリハリがとても愉快。
翻って992型のGT3はというと乗った瞬間からキレッキレのステアリングフィールが印象的で、逆に攻め込んでいった時の安定感がこれまでにないレベルだった。キャラクターの演出を二層で企むあたり、ポルシェの911に対する入れ込みは我々が想像する以上に奥深い。
ランボルギーニもいよいよ電動化に向け歩み出す
最後にランボルギーニについて触れておこう。2021年末になってウラカンの高性能仕様STOをリリースした。サーキットでは汗をかかずとも速く走れてしまうモデルである。ランボルギーニのロードカー史上、もっともサーキットに近い存在だ。
SUVであるウルスの販売も相変わらず好調な一方で、超高額モデルのシアンも順調にデリバリーされている。シアンロードスターにも試乗することができたが、アヴェンタドールのネガ、たとえばISRの変速フィールを面白いように消していたという点で、確かな進化を実感した。同じメカニズムをもつカウンタックLPI800-4にも期待が持てそうだ。
フラッグシップのアヴェンタドールはウルティメという限定車を設定し、その生産をもっていよいよ11年に及んだモデルライフを終えることになる。アヴェンタドールは歴史上、もっとも成功した12気筒ミッドシップカーとなった。
今後、ランボルギーニは各レンジにおいてプラグインハイブリッド化を進める。V12気筒エンジンの継続開発も発表しており、ということはつまりアヴェンタドール後継の次世代フラッグシップはV12のPHEVとなるようだ。(文:西川 淳)